競技内容 #毎週ショートショートnote
弁護士が遺書を読み上げると、遺族の一団はどよめいた。
不動産業により、巨万の富を築いた九十九七五三男。その財産は、誰も全容を把握しておらず、専門家でさえも把握には数年かかると見ていた。
イキバト開催の日、会場に集まった候補者たちは皆、一様に同じ顔をしていた。恐ろしいことに、皆が手術によって同じ顔に整形していた。また、身長や体重をも合わせてきた者もいた。
カラオケ、短歌、詩吟、落語、書道、日本舞踊・・あらゆる演芸に秀でていた七五三男である。当然、競技の内容も生き写しの資質を図るものであるはずだった。
唯一にして最適任であった審査員、七五三男の妻が、重々しく告げた。
みなさんには、50年前に戻って、私にプロポーズしていただきます。
生き写しなら、覚えているでしょう。
会場は、凍りついた。
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