休館だが、休園ではない
9月の半ば、珍しく出張の業務があり、都内に出かけました。
午後から休みをもらっていたこともあって、仕事が終わった感で嬉しくなった僕は、スマホの画面に地図を立ち上げ、近くの美術館を探しました。
駅前のどこかのビルにあるらしい、ナントカ美術館と、少し歩いて向かう場所に「庭園美術館」があると教えてくれた画面。庭園美術館は、どのくらい知名度があるのかわかりませんが、知る人ぞ知る、お洒落な空間というイメージでした。
かつて1度だけ行ったことがあったような記憶もありますが、建物が由緒ある空間というイメージしかなく、誰のどんな作品を観たかも覚えておらず、さらには”庭園”そのものを観ていないという記憶も蘇ってきて、行くしかない・・となりました。
しかし、行ってみると展覧会が始まるのは、翌日から。会期前の美術館は、架け替えや展覧会の準備などがあり、本来なら休館です。しかし、庭園美術館の見どころは、展覧会だけではありません。庭園は入場可能なので、美術館は休館しているけれど、敷地には入れるという、あまりないタイミングでした。
建物ができたのは、今からおよそ90年前。90年前の日本で、この雰囲気の建物が作られたことも驚くべきことです。皇族とはいえ海外に長く暮らしている方もいるのか・・と思いつつ、その方の熱意がこうして残っていることにも思いを馳せます。
実際、僕はこの建物がアールデコ調であるということくらいしか知らないのですが、潔い直線と、存在感のある曲線は、ずっと見ていられそうです。もっと重たい色調の壁の想像していたのですが、実際に見てみるとかなり明るく、やわらかい印象を受けました。
窓や構造物の大胆な切り取り方に驚きつつ、ところどころに気が遠くなるような細かい工夫がされていて感激します。各部屋の窓の上にある通気口の金網部分は、単なる網目ではなく、模様になっています。
建物から見える庭園は、芝生敷きでしたが、日本庭園や洋風庭園と名前がつけられている場所は、それぞれの雰囲気にあった植物が植えられていました。大きく育った松の木には支えるための添木(写真下の左側)がされていて、それがとてもシンプルなデザインで、それぞれの木の大きさに合わせて作られていて、見つけるとちょっと嬉しくなっていました。
天気が良くなってきたタイミングだったのですが、庭園内には人がほとんどいませんでした。実際に、美術館が開館していたら、もっと人がいて、のんびりできなかったかも・・とも思います。展覧会がないタイミングの美術館・・の庭園、とても静かで落ち着いていました。
仕事的なことでいうと、この美術館は都の条例により都立の文化施設となっているようです。皇族=国のイメージでしたが、法律上は都立の美術館。ホームページで見かけた館長さん・・どこかで見たことがあるな・・と思って調べてみたら、金沢21世紀美術館を設計された方でした。
建築と美術・・やはり奥が深い。