迷信 #毎週ショートショートnote
おいマサ、それオバケだろ。やめとけよ。
誰のものかわからない、かなり大きなサイズの白いレインコート。頭からかぶって着けると、子どもがシーツをかぶってオバケになったようだ。だからオバケと呼ばれていた。
それ着てると、事故るらしいぜ。結構みんな言ってるだろ。この前もあったじゃん。
んなこと言われても、傘さして自転車乗れないからなぁ・・。自分しか聞こえない反論をして、オバケレインコートを着て、配達に出る。
雨粒が当たる。ビニール地の表面がバラバラと音を立てる。ルートはいつも通りだけど、視界が悪く、車の気配を察知する音も聞きとれない。大雨の夜に、自転車に乗るオバケなんて俺くらいだ。
予定よりも早く客先に着いた。雨を避けるためにドアに近づいて、チャイムに手を伸ばすと、不意にドアが開いた。
!!
「きゃっ!オバケ!・・・あ、いや、ごめんなさい。」
おでこを強打し、目から火が出た。事故ってこれかよ、なんて苦笑いをしながら顔を上げる。
そこには子犬のように目を潤ませた、小柄な女の子が立っていた。
か、かわいい。
魔法かよ。
いや、事故ってこれか。
(450文字)
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
サポートは、僕だけでなく家族で喜びます!