つまのひと声 #毎週ショートショートnote
モニターに映っていた予告編を見ながら、ため息をついた。なぜ俺が担当者に・・。
こんな映画、誰が観るんだよ。デジタル排除って・・。この監督、ほんと古臭いまんまだなぁ。
監督のシロサワは、経験が長く人脈もあって、業界内で顔が利きすぎる。過去に世界的な評価をもらった大御所に、誰も意見なんてできない。
完成披露試写会は、監督が旧知のホールを使用したいと希望した。古いだけに、デジタル映写機ではなく、上映可能だったので、ことなきを得た。
しかし、公開となると、当然のようにデジタル映写機しかない映画館が圧倒的に多く、華々しいプロモーションも水泡に帰すかと思われた。
完成披露試写会の翌日、監督が急逝し、事態は一変。
遺された奥さんの「デジタルでええやん」のひと声で、全国の映画館で封切りを迎え、日本映画史に残る興行収入を叩き出す作品になった。
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