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ウェディングソング・イン・ザ・パーキング

大学生の頃、僕はジャズを演奏するビッグバンドのサークルに所属していました。ジャズというと、皆さんはどんな曲を思い浮かべるでしょうか。そして、どんな場所を思い浮かべるでしょうか。

ステージでボーカリストが歌う、その伴奏のようなイメージの方もいるでしょうし、ダンスホールで生演奏で踊っている伴奏を担当しているバンド、のようなイメージもありそうです。

僕たちのサークルでは、ダンス用のBGMとして演奏されるような曲(有名な曲、という意味でスタンダード、と呼ばれてもいます)を“ダンパ”と呼んでいました。

ダンパの楽譜が入っているケースも”ダンパ”と呼んでいたのを思い出します。(学校によって言葉が違うので、学バン事情に詳しい方は、お分かりになるかも・・)

実際に、僕が在学中にダンスパーティの伴奏をしたのは、一度もありませんでした。それでも、新宿駅にあるデパートの屋上のビアガーデンや、企業や幼稚園の夏祭り、企業のパーティやとある団体のレセプションのような場に呼ばれて演奏していました。懐かしい・・。

それらの演奏活動は、アルバイトのようなもので、バンドとしてお金をいただいていました。仕事という意味で”ゴトシ”と呼ばれていた演奏活動の中でも、今でも不思議な演奏旅行だったと思い出す茨城への旅のことを。

大学生のサークルの演奏旅行というと、基本的には車で移動がほとんどでした。景気の良し悪しもあって、毎年同じ会社や同じ場所で演奏が出来るとは限らない・・むしろだんだんと少なくなってきている印象でした。

そんなとき、プロデューサーだかコーディネーターだかと名乗るおじさんが現れて、僕たちの演奏をいたく気に入ってくれ、演奏場所の紹介をしてくれるようになりました。

でも、何だか普通の演奏活動とは、ちょっと違っていました。演奏のために行った現場で、吹いてるフリをして映像を撮るという時もありました。

ある時、結婚式場での演奏を紹介してもらい、ちょっと遠い場所でしたが、みんなで、勇んでその結婚式場まで乗り込みました。「じゃあ、その辺で演奏していいから〜」と示されたのは、駐車場。都内から車で数時間かけてやって来るような、いわば”田舎”の結婚式場。作り込んだ世界観の建物の周辺は、広ーい駐車場でした。

結婚行進曲やインザムード、その他、準備してきた曲目を演奏していくのですが、何せ屋外で音が散ってしまうこと、しかも駐車場だから屋根もなくて日差しは暑く、何よりも大事な、聞いてくれるお客さんの姿が見えない・・そんな現場でした。

誰かしら聞いてくれている、そんな気持ちで演奏することはできるのですが、結婚式場とはいえ駐車場まで出てきて演奏を聞いてくれるお客さんはいないのです。屋外で暑さで体力も奪われる状況の中、メンバーはみんながんばりました。

風が吹けば楽譜が飛ばされて、C年(ツェーねん:1年生のこと)が走って拾いに行くような光景もありました。

結局、それ以降、”話が違う”みたいなことが続いたので、バンドとしてそのおじさんの紹介するゴトシは、お断りをしたような記憶があります。

広い駐車場に来ると、思い出す炎天下の演奏旅行。お客さんのいない、苦行のようなあの時間は、今でも”何だったのだろう”と首を捻らずにはいられません。


シンプルな駐車場のサムネイル、infocusさんありがとうございます。このフォント可愛いなぁ。広い駐車場には何もないからこそ、ますます意図がわからない時間でした。

#旅 #演奏旅行 #駐車場 #大学生 #サークル

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