人はひとりでは生きられないから
育休初日、7歳児を小学校の登校に送り出し、3歳児を保育園へ送って、通勤よりも2時間ほど遅い電車に乗った。
向かうのは、住んでいる地域の役所ではなく、勤務している役所のある駅だった。
3人目で3度目の育休は、出産から育休開始までの期間が、今までで1番短い。とは言え、1ヶ月以上は空いている。当初は出産から1ヶ月を待たずに取得予定だったものの、少し遅らせることになった。
出産に伴って職場に申請するもの、育休について届け出るもの、さまざまな手続きがあるのを、いつも思い出しながらやっている気がする。
・・端的に言えば、保険証の発行が間に合わなかった。
今回は病院での面会ができなかったこともあり、母子の退院を待って書類を揃えていた。申請も遅くなり、さらに添付書類も何故か本人の部分だけ白く抜けてしまい、名前の確認に時間がかかってしまった。
病院に付き添ったときにも、ちょっとした緊張感なようなものを感じていたものの、忙しさにかまけて、気がついたときには育休直前の週末だった。
担当部署に電話してみると「あ、出来てますので、来週送りますね!」と言ってくださった。残念なことに、来週とは、僕の育休初日のことであった。
例えば[親展]などと表記されて送られてきたら、誰も中身を確認できない(はず)。育休序盤で勤務先に顔を出すのは、お互いに良くない、とも思う。(出したくはない)
担当の方には「来週から育休なので、直接伺います」と伝えて、初日を迎えたのであった。
電車もさほど混まず、本を読みながら終点まで乗り、勤務先の役所に私服で向かっていると不思議な気分になる。名札をしていないのはふで、市民のように見えるだろう。知っている人とすれ違ってしまうのも気まずいと思って、わざわざ遠回りして向かったりもした。
無事書類を受け取って、帰途に。
商店街もあるし、地下街もある。どのお店もお昼前ということもあり、開店準備中だったり、開店しているけれどもお客さんはほとんどいない。なんて魅力的なんだろう。
こってりが名物のラーメン屋、味に集中できるラーメン屋、リーズナブルな朝豚かつ定食屋、牛丼も讃岐うどんも、モーニングがついてくる喫茶店もある。
選び放題、誘惑だらけ。
朝ごはんを食べたはずなのに、お腹がすいた気がする。カフェも油断するとお店に吸い込まれてしまうので、コンビニで甘い珈琲を買って退散した。
保険証一枚で、医療費の負担額はてきめんに変わる。無いと、とても困る。制度にも感謝だし、当たり前だけど僕には作れない。
まだ生後1ヶ月だというけれど、多くの人が関わっていることに思い至る。
家族にはじまって、医師や助産師など病院の皆さんたちはもとより、行政の職員さん、赤ちゃん用品のお店の人たち、地域の知人たち・・たった一人の赤ちゃんのために、みんなが少しずつ働いてくれている感じがする。しかも、少しずつだけれど、欠けてしまうと、とても困る。
本人は全く自覚などないだろうが、人はひとりでは生きられないのである。
親は、そのことをちゃんと感じていかないと、きっと立ち行かなくなるし、他人に優しくできなくなるだろうとさえ思った。3人目にして、なんだかようやく視野が広がっている感じがする。
まずは、自分の子どもたちで手一杯、というところだけれど。