顔社長 #毎週ショートショートnote
「川本、おまえ”顔が社長みたい”だから、今度自販機で奢ってくれよ。」
同期の島倉が軽口を叩く。
我が社にも、顔自動販売機が導入された。
ただ、最近流行っている”顔が買える”ものではなく、顔認証でドリンク購入ができるらしい。
俺は、幼い頃から顔が濃いのとその言動から、年上に見られ、年相応に見られることはほとんどない。
自販機は”先輩の奢り”機能が搭載され、数人で購入すると、もっとも年上と判断された顔の持ち主に支払いが回る仕組みだ。
童顔だからと嘆いていた先輩と一緒に自販機で買ったら、しっかり俺に支払いのメールが飛んできた。
ある日、たまたま廊下で会った島倉と一緒に、自販機に立ち寄った。するとそこに、社長がふらりと通りかかり「おう、いいぞ」と言って自販機の前に立った。
島倉はコーラ、俺は缶コーヒーのボタンを押す。社長はトマトジュースだった。
尻のポケットに入れたスマホが震えたように感じたが、気のせいだろう。
翌朝、顔自動販売機は、普通の自動販売機に交換されていた。
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#毎週ショートショートnote #顔自動販売機 #社長 #顔
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