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天才トランペッターと僕

高校生の頃、大学に入った先輩が、大学にあったジャズバンドで活躍している話を聞いて、ジャズというのは難しくて、英語がわからない僕には向いていないのではないかと、真剣に思っていた時がありました。

しかし、大学に入学して、友人が先にそのサークルに参加し、あれよあれよと僕もサークルに加入することになりました。活躍していた先輩も、とても喜んでくれた記憶があります。・・高校の時は、とても怖かったのに、丸くなっていました。

サークルでは、楽器を演奏するのが初めてという人もいましたが、多くは経験者。かくいう僕も、トランペットの経験者でした。

そんなサークルで出会ったジャズ。僕たちは、ビッグバンドと呼ばれている20人程度の形態での演奏をしていました。吹奏楽経験者からすると、並び方や、演奏法、考え方など、色々と違う部分がありました。

その活動の中で、僕は伝説的なトランペットプレイヤーと出会うのです。それは、クリフォード・ブラウン。25歳の若さで自動車事故によって夭逝してしまった、天才トランペッター。そんな若き天才にまつわる曲を紹介させてください。


Cherokee (チェロキー)

この曲は、ジャズの世界で”スタンダード”と呼ばれている”定番”の一つ。僕は、スタンダードって何?と思っていましたが、歌いつがれる、演奏し続けられている、そんな曲たちのこと。「スタンダードブック」という楽譜集には、どこかで耳にしたことのある曲ばかりが収まっています。

そのチェロキーを、軽々とサラサラと吹き切る、彼のすごさ。ジャズって、適当に吹いてるように思われるかも知れませんが、一定の決まりがあって、それを守りつつもいわゆる”センス”ってやつで、自己表現を行うのです。

下の音源は、彼の少ないアルバムの中でも、彼の出世作と言えます。僕の好きな曲が集まっている作品です。後年、このバンドに参加していたドラマーが、彼のために曲を録音するのですが、演奏中に泣いてしまってドラムの音がなくなってしまうという録音があります。

西松屋に行くと、この曲名を冠した子供服が並んでいて、ついクリフォードのこの曲が頭の中に流れます(笑)

La Rue (ラ・ルー)

クリフォードが作曲したけれど、演奏した記録が残っていない曲です。曲名は、彼の妻の名前です。この曲は、彼が妻のために作ったのです。

クリフォード夫妻の2度目の結婚記念日の日、自動車事故に遭って夫であるブラウンが亡くなったのです。その時、妻は22歳だったという記録があります。

妻に捧げる曲、それはとても穏やかで、温かな雰囲気の曲です。ともすれば、暗く寂しいメロディではありますが、彼が妻を思う気持ちが、しっとりと心に響くのです。

この曲を、僕はC年(1年)の時の合宿で行われた「コピー大会」で吹きました。コピーは、耳コピのこと。音源を聴き込んで、音を拾い(僕は音感がないので、とてもとても大変な作業でした笑)、みんなの前で演奏するというものでした。

この時の演奏を見ていた先輩から、「クリフォード」というあだ名を拝命したのは、僕にとってとても光栄なことでした。

音源を見つけるたびに聞き返しては、ため息をついたり、泣いたりして、ぜんぜん筆が進みません・・(笑)

そして、最後の1曲はこちら。


I remember Clifford (アイ・リメンバー・クリフォード)

曲名で、わかった方もいるかも知れませんが、これはクリフォードを追悼する曲です。追悼というよりも、彼に影響を受けた演奏家たちによって、恩返しのように演奏される名曲です。

クリフォードが好きと言いつつ、ここまでの3曲で彼の演奏は1曲だけでした。

この曲、初めて聞いた時に度肝を抜かれました。トランペッターであった彼のために、さまざまなトランペッターが吹いているのですが、ジャズの醍醐味であるところの個性が存分に発揮されるのです。それでも、物悲しいメロディは、彼を失った喪失感を、何度も訴えかけてきます。

僕も何度か吹いたことがありますが、僕の演奏を聞いていた後輩たちが泣いていたりして、一体どうした!?と驚いたこともありました。

今となっては、何を思って吹いていたのか思い出せませんが、トランペットを吹いていて、そしてクリフォードと出会えて、とてもよかったなぁ思っていたはずです。

日本人のトランペッターの演奏でどうぞ。

僕は、この曲が好きすぎて、学生の時に、この曲だけを集めたアルバムを作っていました。今となっては、プレイリストにしたためることができますが、当時は誰もが「えっ?!」と驚いてくれたものです(驚いてないかも笑)。

3曲だけ選ぶのは、とても難しかった。あの曲も、あの曲もありました。

彼の音は、とても明快で穏やかなのです。

いや、きっと顔を真っ赤にして吹きまくっているときもあるでしょうし、お客にイライラしているときもあったかも知れません。

音の良さ、フレーズのかっこよさ、そして音楽への愛、それはトランペットという楽器を使って、考えているような、語っているような音楽なのです。

この話を書くために、何度も聞き返しては、胸を熱くする時間を過ごしています。どうか、彼の音を聴いてみてください。

ジャズって難しそう・・と思っている方、例えば、演奏家から入るというのも一つの案です。


そして、もっともっと詳しく知りたい方は、こちらの記事がとても分かりやすくて、僕は好きです。音楽系の投稿が魅力的なhisatarohさんの、ジャズの入口への道案内。あわせてどうぞ。


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