微糖 #毎週ショートショートnote
いつも行く焙煎所のおじさんが話してくれた。コーヒーは豆だから、どこでもお店が開けるんですよ、と笑う。
コーヒーは温度だ。豆が良くても、お湯の温度を間違えると渋みや苦味が強く出たり、酸っぱくなることもある。
おじさんは、温度計で湯温を測り、狙った温度でさっと漏斗のようなドリッパーに委ね、ビーカーに落とす。まるで理科の実験だ。
わたしの心の声が聞こえたのだろうか。ドキドキしながらカップを持ち上げた。温かなコーヒーは、滑らかに舌の上を踊った。ドンとした苦味と、かすかな甘味、鼻を抜けるナッツのような香り。
おじさんは苦心の末、紅茶のような香りのする珈琲豆があることを知った。
粗く引いた豆を、低めの温度のお湯で丁寧に落とし、苦味を和らげるため、微かに砂糖を加えた。
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