猫街

本文

■猫街
自殺志願者Mは猫街の入口を発見する。半猫半人の住人。オッドアイの白猫を好きになるMは街に通う。しかし通報で入口の橋が壊される。猫街に行けなくなり寂しく思う近隣住民や、猫街への渡航者たち。自分たちが猫街の住人のマネをするようになり、新たな猫街が作られる。

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音楽ユニットMONA SHIMAのシンガー・ソングライター、-mona-です。物語音楽、音楽文庫というスタイルの音楽作品を作っています。音源のurlは次の通りです。また、歌詞を最後に付けておきました。

https://www.youtube.com/watch?v=UeQ4j46s4N4

https://www.youtube.com/watch?v=HkOs6QbBeiw


■猫街

作詞作曲 -mona-


この街には
誰も知らない秘密がある
昼と夜がまざりあった黄昏時
街の入り口にかかる
昔からある古い橋を
目を閉じて後ろ向きに渡ると
猫街に出るんだよ

まるで朔太郎の小説さながらに

駄菓子屋のおばあさんは
丸メガネに焦げ茶の
三毛猫になって
店の前でゴロゴロ

ガラス屋のおじさんは
灰色に黒い縞模様の
サバトラとなって
鏡の前で大あくび

僕が通るたび手をあげて
ミヤーと挨拶してくれる
見たこともないはずなのに
なぜか懐かしい猫街の風景


だけどある日
老朽化工事とかで
猫街へ渡る橋が壊された

怪奇現象は困ると
迷い込んだ市民からの
苦情を受けた役所が
やむなく動いたという噂だよ

まるでホラー映画の結末さながらに

新しい橋になって
猫街はもう二度と
見ることも行くことも
できなくなってしまった

路地裏のスナックにいた
黒と白のブチ猫の
カッコつけたボーイたちは
どこへ行ったのだろう

僕が大好きだった
きれいなオッドアイをした
花屋のチャトラ姉さんにも
二度と会えなくなった

いつからか新しい橋の周りでは
猫街を懐かしむ人たちが増えてきた
オッドアイのコンタクトをしたり
白黒の(ぶちの)シャツを着たり(して)
なんだか猫みたいになって歩いているよ

雑貨屋の三毛猫のおばさんも
ガラス屋のサバトラのおじさんも
みんなどこかに行ってしまったけど
今度は僕らが街の風景になるよ