MONA SHIMA
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11月ライブ詳細。沖縄のパリ(畑)んちゅが歌う琉球シャンソン。そして読むように聴け!音楽文庫。物語り性ではなく、物語そのものとしての音楽をお届けします。
11月の東京遠征ライブの日程がきまりましたので、お知らせいたします。タイトルの通り、本当の沖縄がここにある琉球シャンソン。読むように聴かされる音楽文庫の2本立てです。タイトルはややこしいのですが、内容は私同様いたってシンプル。なかなか遭遇できませんので、この機会にぜひいらしてください。 ◽️11月2日(木) Mona Shima ワンマンライブ 【MONAPPÉTIT vol.1】 OPEN 18:30 / START 19:30 前売 ¥3,000 / 当日¥3,500
オジーよ、オバーよ。/音楽は絕望を希望に変えられるか?
★タイトル オジーよ、オバーよ。/音楽は絕望を希望に変えられるか? 作詞作曲:MONA SHIMA 曲の前に 音楽は絕望を希望に変えることができるだろうか? パンデミック時代の音楽のあり方を求める旅の第一章。 音楽は無力である。 死にゆく人を前にして 音楽に何ができるのだろう。 迫りくる大津波を前に 音楽に何ができただろう。 何の力もない音楽の存在意義とは? もし最後の日が訪れたとしたら 音楽人は何をすべきだろうか。 絕望の時代に希望を持ち続ける勇気。 人はすべてを失ったとき初めて気づく。 食べる物、飲み水さえなかった時代 島が鉄の暴風に襲われていた時代 生と死の狭間を生きた オジー、オバーは教えてくれた 音楽の意味と生きることの尊さを。 すべてが失われたときも 音楽は最後の最後まで人に寄り添ってくれた。 すべてが壊れたときも 音楽はわずかな希望の火を人につないでくれた。 音楽は決して無力などではない。 音楽はきっと 人に残された最後の希望 音楽はきっと 人に許された最後の祈り MONA SHIMA
背中の人 戦争に負けなかった曾祖母 (インストゥルメンタル)
背中の人 父によると私の曾祖母の記憶は 背中だけなのだそうです そういうと奇妙な話に聞こえますが そうではありません 曾祖母はいつも縁側の手前 座敷の縁のところに座って いつも庭を見ていたのだそうです ほとんど外出することもなく 朝から晩まで… したがって子供だった父は 曾祖母の背中ばかりを見ることになります だから父の記憶にある曾祖母は 背中の人なのです 曾祖母がそうやって庭を見ていたのには わけがありました 曾祖母は夫と娘ふたりの帰りを待っていたのです 三人は終戦直後疎開先の台湾から 島に戻ってくる途中船のエンジンが止まり 荒天の夜の海に投げ出され亡くなりました 助かったのは息子である 私の祖父ひとりだけです 祖父を救ったのは台湾に住む 中国系の方でした 戦争に負けた日本人を 彼らは助けてくれたのです 曾祖母は三人の死を 受け入れられませんでした そうして 彼らがいまにも帰ってくるのではないかと いつも庭を見て待っていたのです しかし彼らは帰ってきませんでした それでも祖母は待ちつづけました 自分が待っている限り 彼らは亡くなったことにならない おそらくそう信じて… 曾祖母はとても体格のよい女性だったそうです その広い背中が年々小さくなっていったのを 父はいまでもはっきりと おぼえているそうです そして一番小さくなったとき 曾祖母は亡くなりました 62歳という早すぎる死でした でもとても安らかだったということです 曾祖母の人生は 悲しみの人生でした だけどこれだけは言えます 戦争は人の命を奪えるかも しれないけれど 曾祖母の愛する心までは 奪えなかった… そのとき気づいたのです 曾祖母が帰ってこない家族を待ち続けたのは 曾祖母なりの戦争との戦いではなかったかと… 曾祖母はやはり待つことで 家族の死を決して受け入れないことで 毎日静かに戦争と戦っていたのです そして曾祖母はこの戦いで戦争に負けなかった 帰って来るのを信じ続けることで戦争に勝ったのです いつか私が 曾祖母に会う日が来たら その広い背中を抱きしめて はじめましておばあちゃん 私をこの世界に送り届けてくれて ありがとう そう伝えたいです 了
酔っぱらいのホームレスと伝説のキャバ嬢の奇跡の恋物語。一日前のメリークリスマス(音楽文庫)
公開のタイミングを外してしまいましたが、かなり風変わりなクリスマスソングです。もっとも、私にとってはこれが本当のクリスマスソングであるのですが。 私が通っていた中学は、沖縄で一番の飲み屋街のハズレにありました。私の家はちょうど飲み屋街の反対側にあったので、登下校はまさに飲み屋街のど真ん中を通ることになります。 実際、三年間みっちり通りました。夕暮れになると、どこからか湧いてくるように現れる黒服のキャッチのお兄さんたち。きらびやかなドレスを身にまとったキャバクラのお姉さんたち。そして飲んだくれて道端に転がっているホームレスの老人や、自動販売機の釣り銭口に指を入れてまさぐっている中年のオバサン。みんな日常生活の中の当たり前の光景でした。 そんなある日、ふとある光景を目にしました。 それは、私にとって一生忘れることのできない印象的な光景でした。そこからヒントを得て作ったのが、これからお届けする作品です。 今回の第一章はやがて伝説となるキャバクラ嬢とホームレスの奇跡のラブストーリー。神様はいったいいるのかいないのか、いったい人は何のために生きているのか、ホームレスとキャバ嬢の運命は…。 ★ introduction 独白 よくある話なんだが、いろんなことがあって、 俺は、自分という奴、そして自分の人生に絶望しちまった。 理由?それはなんていうか…。ああ、もう忘れちまったなぁ。 いいんだ、そういうことはどうだって。 とにかく、俺は自分に絶望した。 それで毎日、俺は、公園で飲んだくれるようになったんだ。 いや、飲んだくれる方が先だったかな? 絶望が先か…、これもどうだっていいさ。 ああ、神さま。 あんたが本当にいるなら教えてほしい。 どうしてこんな俺を、この世界に残しておくのでしょうか? こんな俺の、生きている意味なんてあるのでしょうか? どうせ答えは返ってこないけれど、まあいいさ。 明日は、あんたの誕生日、クリスマスイブ。 だけど、自分を痛めつけているばかりの俺に、 明日が来るかどうかわかりゃしない。 だったらせめて祝おうじゃないか。 俺と神さま、俺とあんただけの 一日前のメリークリスマスを。 ★ 一日前のメリークリスマス ★ 作詞作曲:-mona- あれはクリスマスイヴの前の晩 俺は夜の公園で一人 安酒をしたたか飲んで 良い機嫌で夜の街へ繰り出したんだ だけど文無しの俺など 誰も見向きもしない 通りにたむろするキャッチでさえも みんな無視しやがるんだ オーメリークリスマス 一日前だけどメリークリスマス 世界で一番早いメりークリスマス 俺ひとりぼっちのメリークリスマス 俺は酒瓶を掲げて 叫んだメリークリスマス おっさんイブは明日だよ くたばっちまいなと キャッチが笑う そこで俺は酒瓶でそいつの 頭を軽く撫でてやったのさ ところが何発も殴り返され 気がついたらゴミ捨て場に 転がってたんだ オーメリークリスマス ひとりで祝おうメリークリスマス 明日はあるかわからないから 生きていればこそメリークリスマス ピンクのドレスを着た娘が 俺をのぞきこんでいたんだ ひどいことするのねと きれいな涙を俺にこぼしやがる だから俺は言ってやったのさ お嬢さん生ゴミなんかに かまうんじゃないよ あんたのそのやさしさは いつか生命とりになるよ オーメリークリスマス あの子に幸あれメリークリスマス 神さま、こんな俺に かわいいプレゼントありがとう オーメリークリスマス 一日前だけどメリークリスマス 世界で一番早いメりークリスマス 俺とあの子だけのメリークリスマス