妖怪退治は床上手!?Part1
『新しい日常』
トラックが最後の荷物を降ろすと、すみれ市の古いアパート前は、新しい生活の幕開けを静かに告げていた。
河野良太は深呼吸をし、見慣れない風景を目いっぱい取り込んだ。
都会の喧騒から一転、自然が豊かなこの街には何か特別なものが感じられた気がした。
「ここが俺の新しいスタートラインだな」
独り言を呟きながら、俺はアパートの鍵を握り締めた。
荷物の山に囲まれながらも、俺は自分がここで新しい人生を切り開く決意を新たにしていた。
ある日の夜。
「良太、一つ大事な話があるんだ」
リビングで、父さんが真剣な表情で言った。
俺、父さん、母さんの3人が向かい合う家族会議の席で、母さんは不安そうに俺の顔を見つめていた。
「実は俺たち、また仕事の関係で海外へ行くことになったんだ」
父さんの言葉に、俺は驚きを隠せなかった。
海外勤務という話は聞いていたけど、こんなに早く現実になるなんて思っていなかった。
「でも、良太は学校があるから一緒に連れていけないの。おばあちゃんのところでしばらく生活してくれる?」
母さんの提案に、俺は心の中で複雑な思いが交錯した。
祖母は優しい人だけど、一緒に暮らすのは少し抵抗があった。
「ばあちゃんってすみれ市で暮らしてるんだよな?あっちの学校は大丈夫なのか?」
「もちろん、学校のことは心配ない。すみれ市の高校に転校手続きを進めておくよ。おばあちゃんにはもう話を通してあるから、一度良太からおばあちゃんに連絡を入れてくれるか?」
父さんの言葉に、俺は頷いた。
海外に行く両親と、新しい生活を始める俺。
家族がバラバラになるけど、その未来に少しの期待が湧いた。
「俺…どうせなら一人暮らしがしてみたい!」
両親は数ヶ月前に日本を離れ、俺は祖母が住むこのすみれ市に引っ越すことになった。
本来なら高校生の俺が祖母と同居するべきという意見が両親から出たけど、俺はなんとか二人を説得して祖母の家から近いこのアパートでの一人暮らしを許してもらった。
「ばあちゃんのおかげで、ここで新しい生活を始められるんだ」
俺の心には、まだ見ぬ新しい生活への期待と、少しの不安が交錯していた。
「新しい学校…大丈夫かな…」
アパートの窓から見えるのは、遠くに木々に囲まれた古い神社。
その方向から微かに鐘の音が聞こえてくる。
祖母の家もその近くにあるんだろうか。
「まずは荷物を片付けないとな。このままじゃ寝る場所もないし…」
そう言って俺は荷物の箱を開け、自分の部屋作りに取り掛かった。
部屋は古いけど、俺の荷物が並べばそれなりに新しい生活の始まりを感じさせてくれるだろう。
さて、明日から始まる学校生活のために、今日中にこの部屋をなんとかしなくてはな。
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