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フランス人と同棲一年。丁寧な暮らしがしんどくなる時だってある

うちのフランス人には崇拝する日本人がいる。

それは片づけの第一人者、“こんまり”こと近藤麻理恵さんだ。

2010年に出版された彼女の著書「人生がときめく片づけの魔法」は日本国内で爆発的に売れ社会現象を起こしたと言われている。

さらには海を超えて世界的ベストセラーとなった彼女の片付けメソッドは世界中でも知られているらしく、うちのフランス人も彼女の大ファンである。

「マリエ コンドウは僕の生活を変えたよ。彼女は天才だ」

Netflixでこんまりさんの片付けメソッドを知りインスパイアされたという。

綺麗好きのマモンの元で育った彼は昔から大変な綺麗好きで、というか綺麗好きを通り越して"サイコパスだ"と彼自身は言う。

「分かってるんだ、僕には尋常じゃないこだわりがある。サイコパスだもん。自分のルールがあって、その通りに綺麗にしてないと気がすまないんだ。」

家は綺麗に整頓されているが、彼はミニマリストではない。

ただ無駄なものや自身の美的センスに合わないものは決して置かないし、リモコンなどの物は常に定位置に置かれている。お花を飾るのが好きだし、壁には絵画を飾り、素敵な家具やお気に入りの作家の作品を探すのが日課。

お眼鏡に敵わないものは置きたくないので、例えばベッドスタンドが必要でも気に入った物に出会うまで待ち、二番手では妥協しない。

そんな彼が作り上げたお家はとても居心地が良い。

陽の光を浴びながらソファでうたた寝したり、青々とした庭でくつろぐ近所の猫を眺めたり。冬は暖炉で火を焚いて長い夜を過ごす。

彼と住むこの家は、私の小さなお城だ。

こちらはフランスのどこぞにあるお城を改装したホテル。残念ながら我が家ではありません。



それでも私が本格的にフランスに住むことになった時、私には気掛かりな事があった。

というのも、彼のサイコパス的な一面を知っていたので、彼は私と住むことについてどう思っているのか不安だったのだ。

そんな私に彼はこう言った。

『mi casa es su casa, mon amour』

"わたしの家はあなたの家"という意味のスペイン語で、自分の家のようにいつでも来てね、または自分の家のようにくつろいでね、という表現です。

強いこだわりがあり自分の家を大事にしている彼がそんなふうに言ってくれたことが、とても嬉しかったのを覚えている。

そして続けて彼が「一つだけお願いがある」と言ってきた。

「自分の家として扱うこと。自分の家だと思って大事にして、居心地の良い場所を一緒に作っていってほしい。」

彼のこの言葉通り、私は彼が作り上げたこの家が大好きだし、二人にとって居心地の良い場所であるよういつも心掛けている。

実は私はもともと整理整頓が得意ではない。
それでも、こんまりさんの教えのおかげか、彼のルールに従うと、不思議なほど簡単に整理整頓された家を保つことができる。

「あんずとの暮らしに何一つ不満はない。僕の大事な家を自分のものとして大切に扱ってくれている。ありがとう。」

一緒に住み始めて半年ほど経った頃に彼に共同生活の感想を聞くと、彼は笑顔でそう答えた。

私も彼と暮らす日々が大好きだ。
生まれて初めて、ここが"自分の家"だと感じる場所ができた安心感で満たされている。

それでもですね・・・

共同生活というのは綺麗事ばかりではなく。
彼のルールが細かすぎてイライラしたりもするんです。

そもそもわたしは大雑把でめんどくさがり。

充電器はコンセントに差しっぱなしにしたいし、ヘアドライヤーはすぐ手の届くところにほしいし、スキンケア一式は出しっぱなしにしたいし、靴の型崩れなんて気にならないし、洗い物がめんどくさいからなるべく調理器具は出したくないし。

ちょっとやそっとのことは"まあいっか"で済ませちゃうタイプです。

ちょっと散らかってても、家のどこかが壊れてても、料理を失敗しても、食器を割っても、物を無くしても、「あー・・・まあいっか」。

だから時々彼の丁寧な暮らしぶりに疲れちゃうときもあるんだけど、完璧主義の彼とナマケモノの私を二で割ってちょうどいい組み合わせになっていたりする。

完璧主義で心配性。先々のことを想像して心配しては、脳内でありもしないドラマを繰り広げる。
自分に疲れちゃうこともある彼への私の口癖は、「Take it easy」”気楽にいこうよ”。

そうすると彼は
「マイラブ…君はなんでいつもそんなに楽観的なんだ」
と苦笑いを浮かべる。

「だって心配事の9割は起こらないんだよ。未来に起きることは未来の自分に任せて、今を楽まなきゃ損しちゃうよ」そう言うと、
「でも僕はその1割から君を守らないといけないから」
と冗談めかして彼は言う。

いつかは海の近くでのんびり暮らしたいね。こちらはアマルフィ海岸のあたり。


丁寧な暮らし、、、偏りすぎじゃないだろうか、と思うこともあるけれども、基本的に彼との暮らしは居心地がいいし、彼の暮らし方は私の日常生活の見方を良い方向に変えてくれた。

マーケットで買う野菜や果物の美味しさ、部屋にお花が飾ってあることの幸せ、早朝の静かな街を歩いてベーカリーへ向かうことの特別感。

彼は私が今まで知らなかった日々の暮らし方を教えてくれる。
私は彼に肩の力の抜き方を教えてあげられる。

パートナーとしては理想的なのではないだろうか。なんて楽天家は勝手に思っている。へへ。

そして愛してやまない我が家。
旅好きの私ですが、お家が居心地良すぎて数日離れると家が恋しくて仕方がない。

彼との生活は私の基盤を固め、自分の軸を作る手助けをしてくれたように感じています。


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