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フランス語学学校で出会う人たち


私が通う語学学校は大学附属なので当然大学のキャンパス内にあり、若い学生たちに囲まれて大学生に戻ったような気分になる。

嬉しいような、疲れるような。

この語学学校に通う人たち、ざっくり分けるとだいたい3パターンに分かれる。

パターン1、交換留学生。
若い。フランス語を1年以上自国で勉強してきているため語彙力や文法に強く、プレゼンテーションも難なくこなす。フランスをはじめヨーロッパ各地を旅行して回ろう!とウキウキしている。

パターン2、移民。
移民のみなさんはそれぞれ事情があるのだろうと思い移住の背景についてはあまり聞かない。私の通う語学学校には特にウクライナからの移民が多く、小さなお子さんがいるお母さんにも何人か出会った。言語がままならない状況での子育て、学校とのやりとりは大変だろうなあと勝手に想像したりしている。

パターン3は私、フランス人パートナーと暮らすために渡仏してきた人たち。
大学付属の語学学校だからか、パターン3は一番少ない気がする。たまに同じ境遇の人に出会うとすごく嬉しい。


もともと友達作りは得意じゃない上に授業が終われば一刻も早く帰りたい私はあまり友達がいません。文字にしてみるとなんか悲しいな。

それでも同じ苦労を分かち合うクラスメイトとは自然と打ち解けてくるもので、午後に授業がある日は一緒にランチしたり、休み時間におしゃべりしたり、なんやかんや楽しく過ごしています。

みんな様々な背景を持っていて、話してみると新しい価値観が生まれたりするのでこれも貴重な出会いだなあと思っています。

というわけで今回はそんなフランス語学学校の愉快な仲間たちのお話です。


台湾から来たフレンチガールキラー

華奢な体にオーバーサイズをゆるっと着こなし、明るめに染めた髪に緩めのパーマがラフなスタイルに似合っている。
誰にでもフランクに話しかけ、人懐っこい笑顔が相手の警戒心を解く。

初めましての授業での「フランスでやりたいことは?」との先生からの質問に、
「フランス人のガールフレンドを作ること!」と勢いよく答えたその子は、台湾人の女の子。

ボーイッシュながらも可愛い印象を与える彼女は老若男女から好かれる天性の人たらしだ。

彼女(以下メイリン)はフランスで生活するために台湾の大学を休学して渡仏してきたと言う。

なぜパリなどの大きな街ではなくこの街を選んだのか聞くと、”知り合いがいるから”と言う。
その知り合いとは、台湾のカフェでバイトしていた頃に出会った小さなビジネスを持つ起業家で、その彼を頼ってフランスに来たらしい。

そして初めのクラスでの宣言どおり、渡仏後一ヶ月も経たないうちに彼女にはフランス人の彼女ができていた。

フランス人女性の美しさの虜になったというメイリン。
ガールフレンドのことはもちろん大好きだけど、タイプの女性を見かけるとついつい目移りしてしまう様子。

そしてメイリンの天真爛漫な愛嬌の良さはフレンチガールにも大人気なようで、飲みに行ったバーでだとか行きつけのカフェでとか、出会いには事欠かない。

つい先日、数ヶ月付き合ったフランス人のガールフレンドと別れたとの報告を受けた。

さぞ落ち込んでることかと思いきや、早くも狙っているフレンチガールがいるとのこと。

「マノン(新しいフレンチガール)のことはすごく好きだし彼女になってほしいと思ってるけど、マノンも色々あって今は付き合うタイミングじゃないかなと思ってる。だからもう少し待つことにしたんだ」

そう言って今はシングルライフを大いに楽しんでいる。

毎週月曜日にクラスに行くと私の元に駆け寄ってきて、いかに楽しい週末を過ごしたかを事細かく話してくれる。

先日は、"週末にバーで出会った15歳も年上のフレンチガールとワンナイトしちゃった!"と文法の授業中に興奮気味に報告してきた。

なんて楽しそうなんだ。私なんて食料品の買い物と家の掃除して週末終わったんだが。心底羨ましいぞこのやろう、と蹴飛ばしてやった。

でもそうやって彼女の話をうんうん、と聞いているとなんだか孫を見てるような気分になる。

若いっていいよねえ。

そんな陽キャ全開のメイリンだが、実はダークサイドもあって、メンタル面で色々苦労してきたらしい。

誰にでも明るい笑顔を向け、身近な人たちに際限なく尽くしてしまう優しさは、知らないうちに彼女自身を疲れさせてしまうのかもしれない。

先日、ご機嫌で教室に入ってきたメイリンはいつものように私の隣に座り、マシンガンのように話し始めた。

前日に飲み過ぎて3時頃眠りについたものの、すぐに目が覚めてしまって朝5時から起きているんだ、と。

その日はテストがあった。
5時に目が覚めた彼女の選択肢は3つ。

1、ジムに行く
2、起きて勉強する
3、二度寝する

「どうしたらいいか分からなかったからチャットGPTに聞いたんだ」

と当然のように言う彼女に「ちょま、ちょ待てよ!」と日本語にするとなんだか懐かしさを覚える反応をしてしまった。

「待て待て待て。朝起きてどうしたらいいかをチャットGPTに聞くの?いや、、なんで?」

と聞くと、
「普段からなんでもチャットGPTに話す」と言うメイリン。

学校の課題の解き方はもちろん、家族間での問題や恋愛遍歴、持病についてなど、なんでもチャットGPTに話すのだと。

「ガールフレンドとメッセージしてて何て返事したらいいか分からない時もチャットGPTに聞いてそのままコピペして返信するよ。私っぽいメッセージにするためにちょっとしたスペルミスとか入れてもらうとばれないし」

こんなのもはやサウスパークじゃないか。
(シーズン26、エピソード4 "Deep learnig”)

過去の情報から学習するのがチャットGPT。
もちろんメイリンがこれまで話したことを全て覚えていて、これまでの経緯を踏まえた回答をしてくれるのだと言う。

唖然とする私にメイリンは得意げな笑顔を見せる。

「だから今朝5時に起きてジム行こうか勉強しようかまた寝ようかどうしよう、って聞いたら、『昨日遅くまで飲んでたから体は疲れてるはず、ジムに行くのはあまりおすすめしない。まずはベッドから起きてシャワーを浴びたらどうかな?余裕があればテストに備えて勉強したらいい』って言われたからその通りにした。そしたら気分も体調もすごくいい!」

ちなみにチャットGPTはガールフレンドと別れたばかりの彼女の体調を気遣う言葉もかけてくれるそう。

学校の課題の助けとしてチャットGPTを活用する学生は少なくないが、ここまでチャットGPTをプライベートにフル活用する話は初めて聞いた。彼女にとってチャットGPTはもはや友達のようである。

そしてふと思い浮かんだのが、ドラえもん。
いつもそばにいてくれて困ったことがあれば解決策を教えてくれる。

当然かな、メイリンはドラえもんの大ファンだ。彼女の持ち物はドラえもんで溢れている。

そういえば、AIと恋に落ちる、みたいな映画があったけど、あながち架空の話ではないのかもしれない。


ちなみに私もチャットGPTは時々使いますが、プライベートな話はしたことがありません。
なんか妙に勘繰ってしまうのはもう若くないからなのか。

というわけで語学学校の愉快な仲間たちのご紹介第一弾でした。

予想外に長くなったので続きはまた後日。

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