嗤う花vol.1 女をむき出せ
人間は花を見ると心が癒される。しかし花は人間の目を楽しませるために咲いているわけではない。
成功することを「ひと花咲かせる」という。だが植物にとって人生のゴールは、花を咲かせることではない。受粉し実をつけることだ。実の中に種を宿し次世代の子孫を残す。そうやって植物は1億5千年以上前から地球で生きてきた。
植物は花粉を風や水に乗せて運んだり、虫や鳥をおびき寄せてその体に花粉をくっつけたりして、別の植物の元に運ばせ受粉する。花はそのためのむき出しの生殖器だ。人間だったら公然ワイセツになりかねない。虫や鳥をひきつけるために進化させた花の色や香りは、人間までも引きつけてしまう。それほど植物の恋愛力、種の保存本能はスゴイのだ。
人間の男女のように、植物と虫もまた選び選ばれる関係だ。
人間は「選ばれない」経験に傷ついてしまう。それが人間と植物の大きな違いだ。
人間が本能に従い素直に恋愛できないのは、自意識が邪魔をするからかもしれない。選ばれなかったらどうしよう、傷ついたらどうしよう、必死すぎてイタイと思われたらどうしよう。それが、人間の本能にストップをかける。
植物は嫉妬もしないし空気も読まない。選ばれなかったのは自分と虫との関係がうまくいかなかっただけで、他の花のせいではない。虫が悪いわけでもない。次こそ虫に選ばれるよう、ひたすら自分のバージョンアップに精を出し策略を練る。
植物の恋愛は、「素直に恋する心」を思い出させてくれる。