輪湖もなみ
私が16年間働いた、ファッション業界で見たもの、聞いたもの、学んだことなどについてお話しします。
先月、銀座の「ドーバーストリートマーケット」で、世界的デザイナー コム・デ・ギャルソンの川久保玲社長をお見かけした。黒髪、黒いサングラス、黒いワンピース。すれ違ってごあいさつしただけだったけど、「ただものではないオーラ」を持つ人は5メートル先でもそれとわかる。デザイナーの菊池武夫氏も、失礼ながらテリー伊藤さんに似ていなくもない。(すみません)でも、タケ先生はタケ先生で他のだれでもない、強烈な個性が独特のオーラを放っている。 試しに私の周りの「すごくおしゃれ」と思う人を何
ごくふつうの中堅大学に入り、ごくふつうの就職活動をしたら、たまたまファッション業界に入ってしまった。それが私だ。 胸にタツノオトシゴのマークがはいったポロシャツを着るのが、最上級のおしゃれだと思っていた平凡な新卒社員。ところがそんな私が入社した会社にいたのは、服の変態たちだった。彼らは命がけで服を愛していた。 大学と服飾専門学校をダブルスクールで卒業した筋金入りの同期や、カードローンで首が回らなくなり会社に督促電話がかかってくるのに、がんがんアルマーニを買い続ける先
ミズバショウの花は地味なOLに似ている。 じめじめした湿地に住み、1本の棒の形をした花に、白くて葉が変化したものが1枚ついているだけ。 地味なOLがすれ違いざま、セクシーな香りの香水をつけているのに気づくとドキリとする。 ミズバショウの狙いはハエだ。ハエは匂いフェチなのだ。ミズバショウは、ハエが大好きな肉の腐った匂いでハエをおびき寄せる。 ミズバショウは座禅草という和名を持つ。苞で包まれた花は、お坊さんがお堂の中で座禅を組んでいるように見えるからだ。 「君の部屋ってな
ハナバチは、マメなモテ男だ。花の間を精力的に飛び回る。そしてハチの巣に持ち帰るため、たくさんの蜜を吸い花粉を運ぶ。頭が良いハナバチは、義理がたく同じ種類の花を選んで飛ぶ。受粉するには最良のパートナーだ。 モテ男をめぐる競争は熾烈だ。アヤメやパンジーは、ハナバチが好む紫色のドレスで着飾り、CAや女子アナのように知性、美貌、スタイルの良さを総動員しアピールする。一方で恋愛対象外の虫に蜜を吸わせないようなしかけもおこたらない。 「はじめまして、おれ、ハエなんすけど」 「・
人間は花を見ると心が癒される。しかし花は人間の目を楽しませるために咲いているわけではない。 成功することを「ひと花咲かせる」という。だが植物にとって人生のゴールは、花を咲かせることではない。受粉し実をつけることだ。実の中に種を宿し次世代の子孫を残す。そうやって植物は1億5千年以上前から地球で生きてきた。 植物は花粉を風や水に乗せて運んだり、虫や鳥をおびき寄せてその体に花粉をくっつけたりして、別の植物の元に運ばせ受粉する。花はそのためのむき出しの生殖器だ。人間だったら公然