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【重度障害児の母達の壮絶な人生】『私たちはふつうに老いることができない』(児玉真美著)を読んで
重度の知的障害や自閉症のある子供を持ち、社会から断絶され家族にも頼ることができず、孤独に、決死の覚悟で育児をしてきた母親たち。
その母親たちの、当事者同士だからこそ話せる苦労話や壮絶な葛藤、誰にも言えなかった気持ち、そしてそれにまつわる凄まじいエピソードの数々が、当事者でもある著者の児玉さんのインタビューを通じて、紹介されている書籍。
ほぼ全ての母親が、「死のうと思ったことがある」「今日も命からがら生きながらえた」という気持ちを抱いてきたことが紹介されており、当事者にしか分からないであろう想像を絶する日々に、言葉を失った。
◾️障害福祉サービスの運営事業者として感じたこと
我々は、そんな親御さんが、これまで決死の覚悟で育ててきたお子さんを、グループホームとしてお預かりをしているのだ。
事業者の視点から、グループホームご利用者皆さんのこれまでの生育歴やアセスメントを読んでいて、(本当に)おこがましくも思うことは、
◾️ご利用者の皆さんの幼少期や就学時代は、今現在よりももっと壮絶であり、
◾️そんな壮絶な時期を「死ぬ気」で育ててきたご家族(特にお母様)のおかげで、
◾️グループホームでの共同生活を送れるように成長されている
ということである。綺麗事ではなく、本当にそう思う。我々の元に来るときは、壮絶な時期を乗り越え、落ち着いてきた時なのである。
そんな壮絶な時期を共に過ごしてきた親御さんからすれば、
「ちゃんと生活ができているか?」
「自分らしく、楽しく暮らせているか?」
ということは、気になるに決まっている。グループホームの支援に「もっとこうしてほしい」と注文をつけたくなったとしても、それは当然のことだろう。
また、そんな壮絶な時期を過ごしてきたからこそ、なかなかご自分のお子さんに、愛情を持てないといった親御さんもおられる。(決して、その本音は口に出せないけれども)
その壮絶さは当事者にしか分からないし、外野がそのことを責めるようなことがあっては、絶対にダメだ。
そんな親御さんに対しては、これまでの苦労に敬意を示しつつ、その苦労をこれからは分かち合っていけるようになりたい。
ご本人のみならず、ご家族(特にお母様)のこれまでの子育てや人生の背景を理解し、これまで懸命に育ててきてくださった全ての親御さんに敬意を持ち、
そして、これからのご利用者さんの人生においては、これまで支えてきた親御さんと手を取り合い、苦労を分かち合える存在でありたい。
そう認めてもらえるような存在でありたいと、本書を読んで、心から思った。