2022年 9月あたりの短歌
「どこまでも」で始まる歌が好きだった 今となっては もう歌えない
北関東 潰れた茶店の 看板に 瀟洒に描かれた 亜剌比亜の月
高い空あたしの吐いた鬱屈が雲のふりして遠く消えてく
お前たち 何をそんなに ないてるの 秋が哀しいの 夜がさみしいの
秋の夜長 庭のイキモノの オペレッタ リリリで始まり チチチで終わる
冷凍庫片隅に貯めた罪の味我が子寝てから食むチョコレイト
「なんてこと 歳月は二度と戻らない」ふと気がついて泣く昼下がり
何もかも下北沢とかに捨ててきた都落ち主婦の軽いタメ息
目の前の光る板をただただ叩き永遠によく似た刹那に見入る
生きていく時間の果てに置いてきたあらゆる記憶の紛失届
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