誰でもいい…
ついさっき道で声をかけて出会ったであろう男女4人組が、横のテーブルで飲んでいる。
私は親友と2人で狭い居酒屋にいた。
帰り道、親友と4人組の話になった。
「あの人たち、どうなったと思う?」
「もう一軒行ったか、ホテルかじゃない」
「そういうのって、あの時だけの関係なんかな」
「うーん。ほとんどなさそうだけど、いいと思ったらどんな関係でも続くんじゃない」
「そっか。私嫌だわー。」
「なんで?」
「え、だって、それってさ、誰でもいいってことよな」
「……」
なぜか、何も言えなくなった。
何日も親友の言葉が頭をまわる。
そして、やっと気づいた。
これまでの私は、人間関係においての"誰でもいい"ということに対して、嫌だと思ってこなかった。
ずっと、自分の代わりがいるポジションの方が、気が楽だった。
小さい時から、誰かに縛られるのも自分が依存するのも、とにかく嫌だった。
特定の友だちは、なるべく作らないようにしていた。
そして、きっと、恋愛ができないのは、誰でもいいって自分が思ってしまっているからだと思った。
これは、人間関係においてのみ、言えることだとは、到底、思えなかった。
就活を通して、考えたことと重なった。
私は、誰にでもできる仕事はしたくない。
経験や勉強を積み重ねて、やっと、自分のやり方で自分にしかできない仕事がしたい。
そのために、そこがいい理由がある、そこじゃないとだめな就職先を選んでいる。
あれ、私、"誰でもいい"の、ちゃんと嫌なんじゃん。
親友の考えに共感できなかったというより、誰かの特別になるのが怖いから、自分の考えと向き合ってこなかっただけだと気づいた。
きっと、就職先にとっては、私は大勢の学生の1人。まだ、"誰でもいい"に過ぎないのだろう。
ナンパに限らず、きっとどんな関係でも最初は、"誰でもいい"からスタートするはず。
それでも、いつか、"君がいい"理由が生まれるから、続くのだろう。
片思いの好きピに振られた時、「君しかいないとは、思えなかった」と言われた。
私の実力不足もあるけど、そもそも、私が"誰でもいい"スタンスで関係を深めようとしてしまったからなのではないかと今更ながら気づく。
こんな考えの私に、大切なことを教えてくれる親友が近くにいる今なら、考えられる。
誰かにとっての、"誰でもいい"の一員になるのではなく、いつか、君じゃないとだめだと思ってもらえる人になりたいと。