ヨーロッパを旅した100の感想:18.ハリーポッタースタジオツアーで感じた映画業界。
はい、行ってきました。ロンドンにあるハリーポッタースタジオツアー!
私はツアーとして予約してロンドンにあるヴィクトリア駅からバスに揺られてきたのですが、車を持っている人なら直接行ってチケットを買えば入ることはできるような気がします。
しかし、バスで行く人は定員が決まっているので早めの予約がオススメです!
ちなみに私はこのゴールデンツアーと言うのに参加していきました。チケットを持ってここに集合するとバス乗り場を案内されるのでここでバスに乗れるまでひたすら待ちます。
ここでも、ものすごくイギリスっぽいなと思ったのがもしバスを待っているときに少しでも列に並んでいないと怒られますし、なんなら列の最後尾に案内されて待っとけ!と言われます。
本当にイギリス人は列に並ぶことに関しては厳しいです。笑
そしてバスもこんな感じの完全にハリーポッターの世界観のある二階建てのバスです。
スタジオまではバスでおよそ2時間くらいだったような気もしますが(もはやロンドンかどうかも分からない)道中はずっとハリーポッターの映画が流れています。
着いたらにほつ検査を受けて中に入ります。
はい、エントランスはこんな感じです。いきなりこんな大きな子がいます。怖い。
JKローリング神様からのありがたい言葉でツアースタートです。
No story lives unless someone wants to listen.(誰かが聞きたいと思わない限りストーリーは生まれない)。本当に神様じみてますよね。
日本の映画美術の話
ここで少し日本の映画美術のお話をさせてください。
実は私は以前、日本の映画業界で美術部として働いていたことがあります。「ちはやふる」や「銀魂2」などにも参加させていただいていたこともあるので、ある程度日本の映画業界の片鱗は感じたことはあります。
といっても映画の美術部と言われてもピンとこない方がほとんどだと思うので、少し説明しますね。
映画美術とは、撮影が行われるセットのデザインから小道具や持ち道具、セット内の装飾、加えて衣装やメイクなどの作品の世界観や登場人物像に至るまで、細かな設定を作り出す部署の総称です。
映画美術の中には、衣装部・ヘアメイク・美術部・装飾部・持ち道具・大道具などの細かい部署に分かれます。もちろん、もっと細かく造園や製鐵などを担当してくれる人がいる映画もあります。
大作になればなるほど、美術部は細分化する傾向にあると思いますね。
一般的に、映画の美術と聞いて思い浮かぶのはセットを作ったりすることではないでしょうか。
これは美術部にあたります。美術部は脚本を読み込み、登場人物達の導線や性格から物語の空間を作りだして行く部署です。
美術部のトップである美術デザイナーが、シーンごとに画を描きます。その画を実際に作るために図面を書いて、大道具にセットを作ってもらいます。そして、その作ったセットの中に装飾部が家具や電飾などの登場人物のキャラクターを構築していく物を配置していき、お芝居をする空間を作り上げます。
つまり、美術部が建築家だとすると大道具が大工さん、そして装飾部がインテリアコーディネーターです。
ハリーポッターの美術部
そう言う経緯があるので、どうしてもこういったスタジオに来るとみてしまうのは美術の部分なのです。
そして、ハリーポッターの世界を美術部として作り上げたのはこの方。
そして、英語でも美術部とはと言う説明が書かれていますね。大きなスクリーンに映るもの全てを作り上げて責任を担う部署です。
そして、こちらが装飾部さん。ハリーポッターと言うマジカルワールドな世界には美術部の力はもちろん、装飾部の力も大いに責任重大な気がしますね。
そしてその全てをプロダクションデザインとして総括しているのが美術デザイナーなのですね。
スタッフたちが10年もの間、通い試行錯誤を続けたこのスタジオからは美術部を始め全スタッフの血と汗と涙があらゆるところから感じることができました。
スタジオ内にある空気感
映画撮影の過酷さや残酷さを身にしみて知っているからこそ感じた苦労も見え隠れしましたし、10年続いたからこその幸せも感じ取れました。
言葉で伝えるには、私の語彙力が圧倒的に足りないのですがものすごく幸せな空間であったことに間違い無いですね。きっとハリーポッターが好きなファンは入った瞬間から感動しかないですし、ますますハリーポッターが好きになることは間違いないスタジオでした。
語弊を恐れずに言うなら、映画製作は無から有を作り出すものだと思っています。頭の中にあるイメージを可能な限り現実世界に違和感のない形で作り出す技術です。
それは大きい小さいの差は確かにあるかもしれませんが、全てに愛と努力の詰まったものです。
ハリーポッターの美術部のすごいところ
私はそんな中でも特に素晴らしいと感じたところは、模型と図面です。
建築をかじった人ならば想像がつくと思いますが、映画の美術でもセットを作る前には一度縮尺が同じ模型を作るのです。
その模型で、脚本の流れや撮影が本当に撮影可能かどうかや違和感がないかどうかを検証するのです。
この映画は特殊効果も多く明らかに最先端の技術で世界的な大作であるにも関わらず模型や図面はほとんどが手書きだったんです。
その画力があるなしは置いとくとしても、日本でも図面はスケッチアップやキャドを使ってデータで作ってしまえる方が多いです。
模型でも、色付きの方が見やすい上に分かりやすいのでデータで作って組み立てる場合もあります。
なのに、この映画ではほとんどが手書きなんです。もう図面に関しては、その一枚が芸術作品のように美しすぎてグウの音も出ないんですが。
大道具さんによっては、手書きをした方が書いた方の意思や迷いを感じて温かみがあると言う方もいます。描く際の躊躇や思考過程が、手書きだと顕著に筆圧や線に出やすいからですね。いわゆる機械では表現できない、人間らしさを感じるからだと思います。
デザイナーさんの年齢にも寄るかもしれませんし、ほとんどが架空のデザインから起こさなければならなかったからかもしれませんがこれには本当に感動しました。
なんだか急にハリーポッターのような大作映画が身近に感じた瞬間でしたね。
ちなみに、セットを作る際はこう言ったイメージボードと言う、資料やロケ地のデザインをまとめて監督にこういったイメージでセットを作ります!と言うプレゼンをします。
このイメージボードも膨大な量があり、資料だけで頭がパンクしそうです。
スタジオツアーで感じた日本の映画業界
正直、私はこのスタジオをみて羨ましくてしょうがなかったです。
こんなにも映画の裏側のスタッフの努力にフォーカスを当てて公表していること、そしてその全てから作品への愛を感じることができたからです。
日本の映画や、映画を観る人は当たり前かもしれませんが役者か監督にしか興味がありません。映画なんて今の時代はiPhonでも撮れるんでしょう?くらいにしか思われていない。
どれだけの人たちの汗と涙で1つの映画作品が出来上がっているか、観客はまるで想像がつかないんですよね。
これほどまでに映画の作り手の愛が感じられる場所はないと声を大にして言えるほど素晴らしいスタジオでした。でも、日本映画にだって、そう言う機会があればまた違った映画の楽しみ方ができたり、もっと面白い想像が広がっているんじゃないかなと思わずにはいられなかったんです。
私はイギリス人に言われてショックだった言葉に、「日本は保守的で時代遅れだ」というものがあります。「ニュースも役者のゴシップが多いのは国民の関心がそこにしかないからではないのか」と。いろいろ思うところはありましたが、あながち間違っていないし的なのかもしれませんね。
日本は、人とは違うこと、違うと言うことが怖いからこそ同じ流れに乗って安心する国民性だと思います。業界の中でももう攻められる時代じゃないからと守りに入っている。
ヒットした原作漫画や本の実写化映画が多いのはそのせいです。
最近では規制や批判が増えてきたので、自由にできるプラットホームを探してアマゾンプライムやネットフリックスに良作が流れる動きも出てきています。テレビに続き映画にも表現の自由がなくなってきてしまったがゆえに、原作ありきの二番煎じ作品ばかりになってきていますしね。
ヨーロッパにいって感じたのは、日本に賞賛されることの多い国だと言うことです。まだまだ褒められて、憧れられている国であると言うことです。
そんな国が、他国にできて日本に出来ないなんてことがあるのだろうかと思わずにいられませんでした。
なんだか後半は愚痴のようになってしまいましたね。すみません。どうしても、このスタジオにいると日本の業界と比較してしまって思考がぐるぐるしてしまっていたので。下っ端だって下っ端なりに思い、感じたことがあったんですよ。
最後に再びJKローリング神様のありがたいお言葉でしめておきますね。
ホグワーツに帰ってきたくなったらいつでも帰っておいでっていてますね。笑
ぜひ、ロンドンに行く機会があればいってみてほしいです!幸せになること間違いないですよ!
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