アーニャには「スパイごっこ」がどうしても必要だった。アニメSPY×FAMILY第5話オリジナルエピソードの考察・感想
※ネタバレを含みます。5話視聴した前提で書いております!
作者様や脚本の方の発言などは考慮しておらず、あくまで主観と個人的信念に基づいてアーニャのことを好き勝手喋っております。
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アーニャ・フォージャー、見た目が可愛いというだけではなく非常に魅力的なキャラ付けがされていますよね。
冷戦の最中「実験で生まれた特殊能力を持った孤児」がまず良い。孤児院に来る前、施設では実験の一環で?勉強を強要させられていました。
フォージャー家の子となってからは「父のために」「東西の平和のため」と思い、(ロイドはアーニャがミッションに気付いていることに気づいていませんが)家族を続けるために健気な努力を重ねます。
アニメ5話では、東西平和ミッションのための第一目標、名門イーデンへの合格を祝し、お城を貸し切ってスパイごっこをする話がオリジナルで挟まれました。
人気漫画のメディアミックス展開において、長期的なスケジュールを考え、アニメオリジナル話を挟むというのはしばしばあることです。
この5話に対するネット上の反応を見ていると、アーニャのためにスパイごっこをして照れまくるロイドが最高で可愛いという意見が見つかりました。一方で、話の展開としてはテンポよくストーリーが進んでいたところにこういうお遊び回が設けられ、面白くなかった、モタついていたという声も見つかりました。気持ちは分かります。
私は、この話の脚本自体の面白さは二の次で、アーニャにとって「お城貸し切り」「お姫様になる」「スパイごっこをする」ということが絶対必要不可欠な無駄な時間だったと考えます。
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いち視聴者としての体感ですが、アニメで音声がついたことで「心が読める」(=声が聞こえる)という能力が、アーニャにとって大きな負担になっているということが強く肌で感じられました。他人の気持ちを常に意識して生きていくというのは並大抵の精神状態ではないはずです。(アーニャが体調不良を起こす場面も出てきます)
「東西世界の平和のため」という大人の都合でアーニャが勉強させられたり、名門に入ることを強要されるという筋書きはわかります。
別にここについて、ポリコレ的にうんちゃら言うつもりはありません。
アーニャ自身もスパイのロイドについて「スパイ、わくわく」と興味を持って、打算的に養子になる訳なのですが、それでも常に大人の声が聞こえている状況は非常にストレスフルであります。
彼女は常に大人の、特にロイドの気持ちを読み、それに応えるように行動してしまうという哀しい体質を持っているのです。
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話はアニメ5話に戻ります。最初は、この城に何かシリアスな事件が隠されてるんじゃないかとか少し思いましたよ。城が実際に使われていた時代に隠された何かしらとか。でもなー--------んにも起きなかった。でもなー-------んにも起きないことがどれだけ嬉しいことか、彼らにはわかっていると思います。
アーニャが「城を貸し切りたい」と無理を言って、ロイドが渋々承知し、城の奥に連れ去られるアーニャ姫をロイド扮するスパイが助けるところが描かれる。もちろん、オモチャの銃撃戦の描き方はアクションが良かった。見どころがありました。しかし、実際に命が脅かされるようなことも一切なく、安心安全な中で劇中劇が繰り広げられるのです。
劇中劇!!
往々にして登場人物の精神状態を象徴する・あるいは物語本編をかき乱すための演出でありますが、アーニャが姫になるという体験ができたというのが良かった。私はあれを観てなぜか泣きそうになりました。何があっても、お姫様アーニャを助けに来てくれるロイドがいる、それが劇中劇の中できちんと描かれるのです。花火が打ちあがるのはハッピーエンドの象徴。最高です。それだけでおなか一杯です。
本作は東西冷戦をベースにした作品ですし、特に現実世界でも大国による軍事侵攻と東西の戦いが私たちの生活に暗い影をうっすらと落としてきています。
過去編では、非常に痛ましい場面も描かれており、シリアスな側面もある本作ですが、コイツはアーニャのことを絶対に守ってくれるだろうという安心感が我々を包み込みます。いや私は全く疑ってはないのですが、それが分かりやすく全世代に示されたというべきでしょうか。
そして劇中劇の裏で、ロイドは城を貸し切り、国中の関係者を巻き込み、アーニャのワガママをかなえるために莫大なエネルギーを使うのです。
スパイの任務としてアーニャの父役を演じているに過ぎない、と言い聞かせているロイドが、子どもだましのお城貸し切りに一晩付き合う。これって本当に大事な時間だと思うんですよね。
アーニャはこのワガママを聞いてもらえたことで、ロイドが単純にビジネスライクな関係としてではなく親としてもアーニャを大事にしていることを感じたでしょうし、ロイドに初めてきちんと心おきなく甘えることができたのだと思います。だから「勉強がんばる」という発言に繋がったのだと思います。自分を大事にしてくれるちちのきもちに応えたい、そういう気持ちですね。星野源さんが歌う「心たちの契約」というのはそういうことなんじゃないですかね。
このアーニャワガママお遊び回は本当に良かった。アーニャがちちの気持ちを読み取って動く部分が多いからこそ、逆にアーニャにとことん振り回される父ロイドの姿に愛を感じました。
アニメオリジナル脚本の中で、彼らは最高に無意味で無駄な時間を過ごしてくれました。多分アーニャにとっては忘れられない思い出になったことでしょう。無意味で無駄な時間をどれだけ一緒に過ごせるかというのも、偽物の家族が”真実”になっていく愛の物語として重要だと思うので、本当にこの回はあって良かったです。
終わりです。
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