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競合分析に役立つバリューチェーン分析
「とりあえず、競合分析を進めておいて!」と丸投げされたことありませんか?
いろいろと情報を集めて、キレイな資料を作って、わかりやすく説明しているつもりなのに、「何か、的を得ていないよね...」とダメ出しされた経験はありませんか?
それは、あなたの分析そのものが悪いのではなく、競合分析の見せ方が少し足りなかっただけなのです。
実は、マーケティングの競合分析を的確に進めることができて、すべての受け手を理解させるノウハウがあります。
それが、バリューチェーン分析です。
この記事を読むと、説得力のある競合分析資料を効率的に作成することができます。
ぜひ、ご活用ください。
バリューチェーン分析とは
はじめにバリューチェーン分析について解説します。
バリューチェーン分析の全体像
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バリューチェーンはアメリカの経営学者マイケル・E・ポーターが「競争優位の戦略」の中で提唱した概念です。
マイケル・E・ポーターは、ファイブフォース分析を生み出した人物でもあります。
バリューチェーン分析は、上のチャートのように、企業の事業を、原材料の調達から利益を出すまでの一連の流れで整理していく考え方で、日本語で言い換えると「価値連鎖」です。
バリューチェーン分析は、原材料の仕入れからカスタマーサポートまで、様々なマーケティング活動を全体的に分析するフレームワークです。
上記のバリューチェーンの各ステップをひとつひとつ評価することで「どこに独自な価値があるか」「どこに弱点があるのか」などを導き出すフレームワークです。
バリューチェーン分析を通して、各ステップが最終的に商品やサービスにどのような価値を与えているかを分析します。
そして自社のバリューチェーンと比較することで、競合とどう差異化するべきかのヒントを見つけることができます。
また、無駄な部分の削減や、効率化すべき部分を浮き彫りにすることができます。
バリューチェーン分析のフレームワーク
バリューチェーンのフレームワークは「主活動」と「支援活動」の2つで構成されています。
主活動は「価値を生み出す活動」であり、支援活動は「主活動をサポートするための活動」です。
主活動
バリューチェーン分析の主活動には以下5つの活動が該当します。
原材料・原価・調達ルート
原材料の仕入れや部品の確保、保管や在庫管理などの活動です。
商品やサービスを開発する前段階のプロセスです。
仕入れ先の場所や条件、商品を作る施設までの送料なども該当します。生産・設備・技術
商品やサービスを作るプロセスです。
倉庫、機械、組立ラインの運用コストなどを細かく分析します。
また、独自技術や特許なども、漏らさず分析しましょう。流通・販売価格
完成した商品やサービスを、エンドユーザーに届けるプロセスです。
送料、倉庫の保管コスト、流通事業者とのパートナーシップなどが該当します。予約注文や配送管理などのシステム面なども分析しましょう。マーケティング
「どう認識させるか」「どう売るか」「どう定着させるか」などの活動面を分析します。
ブランド戦略、メディアやプロモーション、WebやSNS媒体の使い方などをチェックしましょう。カスタマーサービス
接客、トレーニング、メンテナンス、修理、保証、アフターサービスなどが該当します。
商品やサービスの提供価値を維持するために必要な活動を分析しましょう。
支援活動
バリューチェーン分析の支援活動は次の4つです。
調達
原材料、部品、設備、サプライヤーを見つける方法などが該当します。
商品やサービスの生産における調達に関わるものをすべて分析しましょう。研究開発
商品・サービスの研究、設計、市場調査、開発プロセスなどが該当します。
特許、新テクノロジーなどの活用もチェックしましょう。人事
従業員の管理や雇用に関わるすべてのプロセスが該当します。
優れたスタッフが競合他社との差別化に繋がる可能性もあります。
研修や育成コストなどもチェックしましょう。経営マネジメント
資金調達、事業計画、財務、経理、品質管理の仕組みなど、ビジネスの経営全般に関わる活動が該当します。
法制度などもチェックしましょう。
バリューチェーン分析の活用例
①競合分析
競合企業の商品やサービスについて、バリューチェーンの各ステップの情報収集を行い、その構成要素や構造を分析して次のポイントを導き出します。
独自性
ユニーク性
強み
弱み
学ぶべき点
テクノロジー
その他
競合と自社のバリューチェーンを比較し、競合と、どう差異化するべきかのヒントを見つけていきます。
②競合との差別化戦略
競合や自社のバリューチェーンの各ステップの分析を通して、独自の提供価値を確立することができます。
独自性の高い商品やサービス
高単価商材やメニューの開発
新たな市場や利用シーンの開発
事業のリストラクチャリング・クロージング
その他
③コスト削減による利益拡大
バリューチェーン分析は各ステップの活動コストを分析できるので、無駄なコストや活動を発見することができます。
活動効率をアップさせて、利益確保、生産性アップなどを実行することができます。
また、自社の無駄を見つけるだけでなく、最安値で勝負したい時にも効果的です。
安くて早いは〇〇
業界最安値なら〇〇
送料込みでおトクなのは〇〇
バリューチェーン分析のテンプレートと進め方
バリューチェーン分析の進め方はシンプルです。
分析の対象となる要素を、次のテンプレートに落とし込んでしていきます。
バリューチェーン分析のテンプレート
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バリューチェーン分析の実演事例
実際にバリューチェーン分析を実演してみましょう。
今回はサンプルとして、次のお題で分析を進めていきます。
お題は仮のテーマです。
あの手この手で事業継続に取り組む食品事業者の「本格ケバブ専門店のAフーズソリューション 」と「本格タコス専門店B食品産業」の競合比較といたします。
バリューチェーン分析のお題
以下は2社の事業概要を整理したものです。
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この2社は売上高と利益額が拮抗していますが、事業戦略はまるで異なっています。
その違いをバリューチェーンで分析していきます。
バリューチェーン分析の事例
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状況の解説
Aフーズソリューションはレシピ開発は自社で賄っていますが、それ以外の原材料調達、生産、流通販売はすべて外注しています。
販売戦略に強みを持ち、FC展開で全国の地域市場に食い込んでいます。
また、主力商品の本格ケバブから派生させた地域FCオリジナルトッピングを話題化させ、それを武器とした関連商品を開発してEC通販を積極的に展開しています。
Aフーズソリューションは話題づくりと商品企画開発力に優れており、EC通販商品のラインナップは同社の強みとなってます。
しかし、FC店舗が不振に陥り、その穴埋めをデリバリーとEC通販で補おうという状況となっています。
対して、B食品産業ですが、こちらはAフーズソリューションと対象的で、原材料調達、生産設備、販売店のすべてを自社で運営し、食品開発のバリューチェーンの独自のノウハウを有しています。
商品を本格タコスに絞り込んでいることと、販売網を都市圏展開に絞り込んでいることで、独自のポジションを獲得していますが、業績低迷を打破するため、別プランの発動を余儀なくされています。
そこで、B食品産業は独自の商品開発力と生産ノウハウを活用し、コンビニのOEMブランドとして商品展開に活路を見出します。
不況下でも、一定の集客力を持つコンビニと組むことで、一定の売上を確保しつつ、さらなる成長の打ち手として、コンビニと共同出資の商品開発会社の立ち上げを進めています。
ポジショニングマップ
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この2社は、それぞれの事業戦略はまるで異なりますが、それぞれの強みを活かした事業展開に取り組んでいることがお分かりいただけたと思います。
このように、バリューチェーン分析の項目をひとつひとつ整理して比較していくことで、客観的な分析ができます。
さらにこのテンプレートを活用することで、バリューチェーンの全体を分析できるので、漏れがなく、さらに一歩踏み込んだ競合比較が実施することができます。
バリューチェーン分析のチェックポイント
最後にバリューチェーン分析で重要なチェックポイントを解説します。
バリューチェーン分析で扱う情報の正確性や鮮度は適切か?
バリューチェーン分析のフレームワークでは、市場、業界、競合、ユーザー、テクノロジー、サービスなどの、さまざまな情報を活用します。
ここで、重要なチェックポイントとしてお伝えしたいことは、バリューチェーン分析で扱う情報の「正確性」と「鮮度」が、適切なものかどうかということです。
フレームワークを有効活用しても、そこで扱う情報やデータが、事実と乖離していたり、古い情報であったりした場合、考え出される仮説の価値がとても低いものになってしまいます。
特に、テクノロジーやサービス分野の情報は、情報の更新が速いので、注意が必要です。
バリューチェーン分析に取り組むときは、マーケティングの専門性と信頼性の高い情報源を活用するようにしましょう。
情報の正確性
出典が明らかな情報を使用しましょう。
なるべく一次情報を使用しましょう。
専門性が高く、信頼できる情報源から入手しましょう。
情報の鮮度
なるべく新しい情報を収集しましょう。
リリース後、1年以内の情報を使用しましょう。
おすすめのマーケティング情報源「マーケメディア」
マーケメディアは㈱マーケメディアが運営するマーケティングデータベースプラットフォームです。
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バリューチェーン分析のおすすめ情報
これらの情報が皆さまのビジネスのお役に立ちますとうれしいです。
ぜひ、ご活用ください。
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