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【徒然草考:第十二段】話していて不愉快な人

徒然草を読み解きつつ人生のたしなみを学びなおす「徒然草考」。
第十二段をお届けします。


徒然草とは

徒然草は鎌倉時代の随筆家である吉田兼好が著した随筆集。
日常生活の中で感じたことを淡々と書き綴り、人の生き方や人間関係の在り方などを鋭い観察眼から問題提起し、豊な気付きを与えてくれます。

考察のお題

第十二段:話していて不愉快な人

原文
※古文体が苦手な方は読み飛ばして現代語訳におすすみください。

同じ心ならん人としめやかに物語して、をかしき事も、世のはかなき事も、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向ひゐたらんは、たゞひとりある心地やせん。
たがひに言はんほどの事をば、「げに」と聞くかひあるものから、いさゝか違ふ所もあらん人こそ、「我はさやは思ふ」など争ひ憎み、「さるから、さぞ」ともうち語らはば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少し、かこつ方も我と等しからざらん人は、大方のよしなし事言はんほどこそあらめ、まめやかの心の友には、はるかに隔たる所のありぬべきぞ、わびしきや。

現代語訳
※著者の個人的な解釈による現代語訳です。

自分と同じ価値観を持っている人は、水入らずに語り合うことができる。
興味深い話でも、つまらない与太話でも、お互いに歯に衣を着せず語り合うことができるのである。
こんなに嬉しいことはない。
でも、そういう人は、そう都合よくいるわけではない。
たいていの場合は、様子を見ながら相手の気分を害しないように、適当に相槌を打って話す羽目になる。
そうなると、鏡に向かって話しているような気分になり、虚しくなる。
同じ意見であれば「そうだね」となるけれど、違った意見であったならば「いやいや、そんなことはない」と論争が勃発してしまうこともある。
それはそれで退屈から解放されて良いのかもしれないが、たいていの場合は不快だし、面倒なだけである。
気安く小さな愚痴もこぼせないような人と話すのは、とりとめのない話をしているうちはまだ我慢できるかもしれないが、それでも心から交流できる人と話すのと比べたら、やっぱり嫌なものなのである。

「話していて不愉快な人」私の体験

徒然草の第十二段を味わっていて、私はひとつの記憶に想いを巡らせていました。

すべての会話に「いや、違う」を入れてくる上司と部下がいた
これは、その昔、勤め人だった頃のお話です。
とある広告代理店の地方支店に、副支店長として単身赴任していた時、すべての会話に「いや、違う」を入れてくる上司と部下がいて手を焼いたという負の記憶。
上司というのは支店長。
私が赴任してから1年後に着任してきた人で、とにかく自分語りが多い特徴がありました。
着任前の社内調査では根は良い人という触れ込みでしたが、自分とはなんとなく気が合わなかったですかね。
ただ、業務上、この人がいる時は必ず決裁をしてもらわなくてはならないルールだったので、「いや、違う」と言われ続けながら我慢して過ごしました。
彼の思考パターンや行動パターンを記録して、逆張りすることで振り回されずに済む場合もありましたが、「いや、違う」が口癖なので、ずいぶん無駄な仕事をさせられました。
次に部下。
この人は恐らく「いや、違う」の感染者。
彼は、支店長が変わる前は「いや、違う」が口癖になっていなかったので、ボス猿を見て真似をする子猿なんですね。きっと。
私は生まれつき平和主義者なので距離を取りながらなんとかお付き合いしていましたが、今、思い出しても不愉快でしたねぇ。
皆さんの周囲にこんな人達はいますか?

いちいち否定する人の心理

と、言うことで、いちいち否定する人について考えてみましょう。

  • いちいち否定するのが習性や習慣になっている
    先天的にいちいち否定してしまう遺伝子を受け継いでいる、または、いちいち否定する人に囲まれて育ち、習慣になってしまっているケースが考えられます。

  • 相手に劣等感を持っている
    いちいち否定する人は、実は自分に自信がなく、相手に劣等感を抱いている場合があります。
    相手の話に同意したり共感するとなんとなく負けたと感じてしまうので、とにかく何でも否定しているのかもしれません。

  • マウントを取りたい
    まず自分が優位に立つことが重要と考えて、いちいち否定してくる人もいるでしょう。
    相手を否定することで、ダメージを与えた気になったり、そんな自分が優位に立っていると認識しているのでしょう。

  • 常に自分の意見が絶対に正しいと思っている
    「自分が絶対に正しい」という考えが凝り固まっているため、異なる意見を拒絶してしまうというケースも考えられます。
    この場合、自分がやりたいことがあったり、何かしらの目的があったりすることが多く、それをどうにか押し通すために、周りの人の意見の悪いところを見つけて否定しては「だから自分の案の方がいい」という結論に無理やりつなげようとしているのでしょう。

  • 現状を守りたい
    いちいち否定する人の中には、今の状態がベストで変えたくないと思っている人もいます。
    現状に満足していたり、何かしらの利権やメリットがあるので、それに合わない意見はすべて跳ね返すのでしょう。

  • 相手に敵意を抱いている
    人間、憎んでいる相手や嫌いな相手の言っていることは拒否してしまうのが常です。
    他の人のことは否定しないのに、特定の人にのみいちいち否定している場合は、その人に敵意を抱いている可能性が高いです。

  • 今の自分に不満がある
    今の自分に不満があり、他の人の成功や幸福を素直に喜べないため、いちいちいちゃもんをつけて否定してくる人もいます。
    たとえば、「次の人事で課長に昇進する内示をもらった」という幸せな報告に対して、「いやいや、中間管理職なんて社畜でしょ、私は嫌だね」と、いちいち水を差してくる人は、このタイプに当てはまるでしょう。
    これは嫉妬心を抑えるために否定しているパターンです。

いちいち否定されるときの対処法

次に、否定されて困ったときの対処法です。

  • 相手を分析する
    「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
    孫子もそう言っています。
    相手の思考パターンと行動パターンについて細かく記録して、効果的な対処方法を編み出してやりましょう。

  • いっそのことじっくり向き合ってみる
    いちいち否定する人に否定されたら、じっくり向き合うのも一つの手かもしれません。
    「どうしてそう思うんですか?」など、なぜなぜ分析をしてあげましょう。
    もしかしたら、相手がいちいち否定してくるのには、何か正当な理由があるかもしれません。

  • 同じ土俵に立たない
    いちいち否定をしてくる人と同じ土俵に立たないようにしましょう。
    同じ視点でものを見てしまうと、腹立たしさを感じたり、言い返したくなったりします。
    状況を一歩引いて考えるだけで否定されてもイライラせずに済みます。

  • 真に受けずに聞き流す
    否定的なことをいわれたら真に受けずに聞き流してみましょう。
    すべて真剣に受け止めていると、こちらの心が消耗して疲れてしまいます。
    「へぇ~そうですか」と軽く流してしまいましょう。
    この場合、大事なことはその場で決着させないように段取りしておくことが重要です。

  • 距離を置く
    いちいち否定する人と接して疲れてしまったら、距離を置いて、極力関わらないようにするのも効果的です。
    そもそも、いちいち否定くる人とは、無理して付き合う必要はありません。
    淡々と必要最低限の関わりで済むうように持っていきましょう。

  • 信頼できる人に協力してもらう
    いちいち否定してくる人がいるせいで仕事が進まない場合は、チームで対応したり、信頼できる上司などに相談することもおすすめです。
    いちいち否定してくる人が上司の場合は、そのさらに上役に相談してみるのもいいかもしれません。
    日頃の人脈づくりが物を言います。

いちいち否定してくる人に悩まされている方は、こちらも参考にしてみてください。

終わりに

お付き合いいただきありがとうございました。
徒然草を題材に、あれこれ考えをめぐらすことは、ことのほかおもしろいですね。
同じように、徒然草を読んであれこれ考えてみたいという方におすすめの書籍をご紹介させていただきます。

電子書籍版の徒然草はこちら

オーディオブック版の徒然草はこちら

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
こちらの情報がお役に立ちましたらうれしいです。

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