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【徒然草考:第七十一段】心理現象あるある

徒然草を読み解きつつ人生のたしなみを学びなおす「徒然草考」。
第七十一段をお届けします。


第七十一段:心理現象あるある

原文
※古文体が苦手な方は読み飛ばして現代語訳におすすみください。

名を聞くより、やがて、面影は推し測らるゝ心地するを、見る時は、また、かねて思ひつるまゝの顔したる人こそなけれ、昔物語を聞きても、この比の人の家のそこほどにてぞありけんと覚え、人も、今見る人の中に思ひよそへらるゝは、誰もかく覚ゆるにや。
また、如何なる折ぞ、たゞ今、人の言ふ事も、目に見ゆる物も、我が心の中に、かゝる事のいつぞやありしかと覚えて、いつとは思ひ出でねども、まさしくありし心地のするは、我ばかりかく思ふにや。

現代語訳
※著者の個人的な解釈による現代語訳です。

人の名前を聞くだけで、その人の顔が何となく想像できるものだ。
しかし、実際に会ってみると、想像していた顔とは違うことがほとんどだ。
書物を読んでいる時、物語に出てくる家の様子を、自分が知っている家の印象と重ねて想像してしまうように、人についても、今見ている誰かの顔と結びつけて考えてしまう。
これは、誰しもが経験することだと思う。
また、今、誰かが話していることや、目の前にあるものを、以前、どこかで経験したようなそんな気がすることがある。
それがいつどこで経験したのかは思い出せないけれど、確かにどこかで経験したような、そんな確信のようなものを感じることがある。
これは、私だけだろうか。

スキーマ理論?

第七十一段では、人が情報に対して、無意識のうちにイメージを膨らませ、過去の経験と結びつけてしまう心理現象について、あるある的に描写しています。
また、そのイメージと現実との間にギャップがあることや、過去の記憶と現在を混同してしまう心理現象についても考察しています。
さすが兼好法師。
おもしろいことをしていますね。

私もさっそく、その考察に関連する心理理論についてあれこれ調べてみました。

スキーマ理論が近しいのでは?

私たちは、過去の経験や知識に基づいて、頭の中で、無意識に物事の概念やパターンをつくり出します。
これをスキーマと呼びます。
人は、情報が入ってくると、無意識に、その情報をスキーマに当てはめて理解したり解釈するわけです。
「思い込み」や「デジャブ」とも近いですかね。
人それぞれ背景や行動パターンが異なるため、スキーマにも違いがあります。
これが積み重なって個性となっていく。
おもしろいですね。

人は夢想する生き物
日常生活で、自分の思い込みやデジャブの現象に気付いたら、第七十一段を思い出し、夢想してみるのおもしろいですね。
「あ、これって、兼好法師もやってたことだ・・・」なんてね。
遥かなる時を超えて、兼好法師とつながった気分に浸れるかもしれません。

関連書籍のご紹介

終わりに

お付き合いいただきありがとうございました。
徒然草を題材に、あれこれ考えてみることは実に楽しいですね。
徒然草を読んであれこれ考えてみたいという方におすすめの書籍をご紹介させていただきます。

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オーディオブック版の徒然草はこちら

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
こちらの情報がお役に立ちましたらうれしいです。

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