夏の終わり、桃子の涙
彼氏は家電量販店が嫌いだ。
「お得だよー、ご利用ご利用!買わないと損ですよー」というメッセージを四方八方から発信する棚に並ぶ商品やその陳列棚に取り付けられたPOPの圧が苦手なのだ。
彼が好むのは広々とした空間に品よく並べられた「私にはあなたよりいい買い人がいるかもしれませんし、無理して買い人になって下さらなくて結構ですことよ、別に」という高嶺の花ばかりが並ぶお店だ。彼は高嶺の花が好きだし、なんなら高飛車な女性も好きだ。一時期は沢尻エリカが大好きだった。「ちゃんと捨ててよ」と伝えた彼が飲んで食卓に散らかしていた3本のビールの空き缶が「ちゃんと捨てましたよ」と言わんばかりにゴミ箱周辺の三カ所に別々に立てられていたのを私がまとめてゴミ袋に放り込み「どうしてちゃんと捨てられないのよ」と言ったのに対して「別に」と返されたときは殺意が湧いたものだった。
話を家電量販店に戻そう。
2021年の6月末、ヤマダ電機に出かけた時も、右足と左足に10トントラックのタイヤでも括り付けているのかしらというくらいに彼の足取りは重かった。その日私たちは、毎日のように出かけていた立ち飲み屋が店を閉めているコロナ禍の自粛期間対策にとnintendo switchを求めて池袋のヤマダ電機に出かけた。
生まれてから一度も家庭用ゲーム機を持ったことがなく、ほとんどゲームをしない彼も、桃鉄なら一緒に遊んでくれるだろうと私は思っていた。
桃鉄に対して彼は想像していた以上の好反応を見せた。いや、想像を超え過ぎた。
毎晩のように桃鉄をせがまれることがつらくなった私は軽い気持ちで「オンラインで対戦ができるみたいよ」と言ってしまった。以来私はnintendo switchを触ったことがない。彼が完全に独占して桃鉄オンライン対戦を続けている。ソフトが桃鉄令和から桃鉄ワールドに変わっても彼の態度は変わらない。
「桃鉄を買って桃鉄をとられる」。
この奇妙な逆転現象を私はそう名付けた。こういうことってよくある。例えば、男性不信の女友だちのリハビリにとデートの場に誘ったら、恋人と女友達がいい感じになってしまう、みたいなことだ。
そして今、新しい逆転現象が起きているのを私は感じている。もしかして私の方が彼よりもMOMOリーグに熱くなっていない?
MOMOリーグの詳細とか
彼がMOMOリーグにおいてチーム監督をすることになった経緯とか。
そのあたりの詳細は、二度と話題にしたくないので、
大変お手数をかけて申し訳ないのだけど
以下のnoteを読んでもらえると助かります。
私は今日彼のチームから出場するけりさんに絶対に勝ってほしい、予選リーグ4位以内という高く分厚い壁を打ち破り、チームを決勝へと導いてほしい。
けりさんについてはこちらのnoteに書いているので一読いただけますと幸いです。
どうして私はこれほどMOMOリーグに前のめりになったのだろう。もしかすると碌でもない彼の誘いに応じてチームに入り、桃鉄ワールドの腕を磨き、まったく桃鉄とは関係ないラップまでしてくれたチームメンバー(彼はクルーと呼ぶ)に少しでもいい思いをしてもらいたいという気持ちかもしれない。あるいは感謝かもしれない。もしかするとチームの戦う姿に心を動かされたのかもしれない。いい大人が、ゲームに負けて泣く。そんな熱い大会に魅了されたのかもしれない。
今日けりさんはチームを見事に決勝へと導き、私は彼氏にこういうのだ。
「よかったね」
みなさんにはぜひ私の自分でも理解できない感情を応援してほしい。
応援方法は以下の通りだ。
1,今日(2/6)21時から予定をあける
2,youtubeでMOMOリーグの公式チャンネルにアクセス
3,ライブ配信中の対戦を視聴
4,コメント欄に「けりさん頑張れー、王子様ヒウィゴー(桃子もそう言ってた)」と書き込む
以上だ。
面倒なお願いをしていること、大変心苦しいですが、ついでなのでチャンネル登録や高評価もしてもらえると、チームメンバー(彼はクルーと呼ぶ)も喜ぶと思います。
配信はyoutubeはこちらからチェケラいただくのがスムーズです。
彼が地方大会からテレビを独占して見る高校野球を横目で見はじめ、甲子園決勝では毎夏泣いてしまう桃子より