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title『えみふる!』
2025年 2月 19日。
ヤクルトスワローズ球団マスコット、つば九郎の担当スタッフの方が亡くなった。
私はその速報をSNSで目にし、思わず泣いた。
2007年ごろ、中日ドラゴンズの球団マスコットであるドアラが急激に流行り、一躍球団マスコットというもの全体が注目された。私はまんまとそのブームにハマり、YouTubeで彼らが自由に動き回る動画を探してはにやにやと眺めるのが趣味になった。私が知らなかっただけで彼らはそれぞれに個性があり、動きもリアクションもいちいち違い、見ていて飽きなかった。
中でもドアラととりわけ仲の良さそうな太めのツバメが気になった。
それがつば九郎だった。
トラッキーやジャビット、親友のドアラが次々とグラウンドでバク転ロンダートバク宙などと技を決めていく中、静かな山のように不動を決め込む太めのツバメ。どうして今まで気にならなかったのかと不思議に思うほどの存在感があった。
頬も腹もぽってりと、絶対にアクロバットなどしません! と宣言しているような体型。敵を見つけたら刺すのか? と思いたくなる、わざとらしく反ったスワローテイルもかわいらしい。
面白いキャラクターがいるもんだ、と軽い気持ちでつば九郎の動画を漁っていくうち、名物のフリップ芸を見て私は確信した。
こいつは本当に『面白い』ツバメだ。
契約更改やファンイベント、ドアラやほかキャラクターとの対談などで、そのフリップ芸は発揮される。
好きな食べものは「やきとりとる~び~」。ザギンでシースー的な業界用語が妙に多いのがまたジワる。まるっこいかわいいひらがなでボケまくり、たまに鋭いことを言う(書く)。名言も多く、彼の言葉に救われた方もたくさんおられるのではないだろうか。
そんなつば九郎の名言の中で、私が一番好きな言葉は『えみふる』である。
『えみふる』はつば九郎による造語であり、
「笑み」+「Full」= 『えみふる(笑顔いっぱい)』
という意味だ。
普段、「とりあえずる~び~2つ」とか言っているおっさん臭いツバメが考えた言葉とは思えない。
つば九郎はいつも人を笑顔にさせていた。
不遜な態度で、大きなおなかを揺らし、頭部のわりに短い手で小さなビニール傘を振り回し、たまにはスケッチブックに毒舌を吐き(書き)、みんなを笑わせていた。
そんな彼について、思い出せば思い出すほど涙が止まらない。
ドアラとはまた違う方向でみんなを笑わせ、しあわせにしてきたつば九郎。
担当スタッフの方には、大変お疲れさまでしたとお伝えしたい。
一度も実際にお会い出来なかったことだけが心残りだが、これも担当スタッフの方とつば九郎からのメッセージなのだろう。会いたい人には会えるときに会うべきだと。
そうすれば、
『みんな、えみふる』
になれるのだから。
今度は、会いに行くよ。つば九郎。