この気持ちは、恋としか呼べない
夏休みのグラウンドでは、野球部が練習の最中だった。
十年ぶりに戻ってきた故郷。
懐かしい想いで母校の高校に立ち寄った。
野球部のマネージャーらしき女の子が、荷物を運んでいる。
それを手伝うかのようにユニフォーム姿の男の子がひとり、彼女に駆け寄って声をかけていた。
彼は彼女が抱えていた荷物を持ってあげると、少し先を歩き出す。
微妙なふたりの距離感。
ふと、十年前の記憶が蘇ってくる。
野球部のマネージャーだった私は、西田くんのことが好きだった。
でも、部員同士の恋愛は禁止で、想いを伝えることはできなかった。
引退しても伝えることができず、封印してしまった恋心。
「もしかして、由希?」
声をかけられて、顔をあげると、そこにはユニフォーム姿の西田くんが立っていた。
「やっぱり由希だ。久しぶりだな。卒業以来?」
笑顔になると、目尻が下がるところも変わってはいない。
「久しぶり」
十年ぶりの帰省は、懐かしい恋心をも戻してくれた。
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