恋と夢と、変わらない世界を

ダンスを始めたのは、失恋に備えてだった。
これから私は、失恋する。
だから、恋人に依存するのは、もうやめなければならない。
彼のことを考える時間を減らしたかった。
彼に会いたいと思う気持ちを減らしたかった。
会いたいのに会えないと、心が折れそうだった。
だから、彼のことを考える時間を、ダンスに向けたかった。

でも私は、彼に失恋しなかった。
彼のことを考える時間は、大幅に減ったけれど、彼を想う気持ちが減ったわけではない。
むしろその反対だ。彼のことも自分のことも大切に思えるようになった。

「いよいよ、明日なんだな」

「うん」

いつ失恋してもいいように、無我夢中で続けてきたダンス。
明日私は、夢を叶えるために彼から離れてアメリカへ出発する。

淋しくないと言えば嘘になる。
でも、この道を選んだ自分を間違っているとは思わない。
私は失恋しなかった。
だからまだ、夢を叶えるために踊ることができるのだ。
新しいステージで、私のために。

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百瀬七海
いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。