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小さな世界を飛び出して
何を始めるにしても、初めてのことって、とても緊張する。
特に、私のことを誰も知らない場所へ踏み入れるとき。
みんなの好奇の視線に、好意はあっても悪意はほとんどないだろう。
それでも、一斉に自分を見つめる視線が、いくつも存在するような経験は、いくつになっても慣れることがない。
初めての転校は、小学校2年にあがる春のことだった。はっきりいって、記憶にない。まだこのくらいの年齢のときだと、人見知りとかそんなに発動してなかったんだろう。
自分を誰も知らない初めての場所へ行くという経験を、その後も何回か経験してきた。
その一番最近の出来事は、今の会社に就職したときと、noteを始めたときだった。
リアルでの私は、そういう初めてを何回も経験してきていたし、それなりに大人になって、いろいろなことがそれなりに、できるようになっていた。
でも、noteの中での私はやっぱり感覚が違った。
百瀬七海という名前では、何年も生きてきた。だから、note以外の場所に行けば、私のことを知っていてくれる人もいた。
だけど、noteは違う世界だった。使い勝手もわからずに、ひたすら書いてた。スキを押せずに、そっと読んでnoteを閉じることも多かった。
見知らぬ場所で、なにかを始めることはとても勇気がいることだ。知らない人の書いたnoteに、スキってココロを置いてくるのも、なかなかできなかった。
その頃に比べたら、だいぶ私のことを知ってくれている人も増えたと思う。それでも私は、まだ世界を知らない。小さな小さな、「おもちゃ箱」の中にいる。
おもちゃ箱の中から見る世界は、時間によって色が違う。
幸せな色も、悲しみの色も、憤りの色もある。どれもが、その人の心の色を映し出している。
その想いを、ときどきおもちゃ箱から取り出してあげて、大きく伸びてみたり、反対に鍵をかけて閉じこもってしまったり。
おもちゃ箱の中のおもちゃがいっぱいになってしまったら、どうする?
中のおもちゃを捨てて、整理をする?
それとも、もっと大きなおもちゃ箱を用意する?
大きなおもちゃ箱を用意しても、きっとそれはすぐにまたいっぱいになってしまうだろう。
生きていく上で、私はいろいろな感情を背負いきれない。だから、私は私の持てる分の感情しか、自分のおもちゃ箱の中にはしまえないのだ。
書くことで、感情を整理している。
誰にも響かない文章を書いたとしても、そこに無意味なことなんてない。
おもちゃ箱に少しゆとりを与えてあげること、そこに意味があるのだ。
新しい出会いが増えるたび、新しいことをなにか始めるたび、おもちゃ箱の中身は増えていく。その中にしまってある過去の経験や想いは、立ち止まりそうになるときに、役立つこともきっとあるだろう。
人生のおもちゃ箱の中には、それぞれの人の経験がたくさん詰まっている。
初めてのことも、2度目のことも、何度経験してもうまくできないことも、全部。
どれだけ経験したら、もう少しうまく生きれるのだろうか?
初めてをたくさん積み重ねても、私はいつも初心者だった。
マニュアルなんて無意味の初心者だ。
それでもね、やっぱりたくさんの人たちに出会えたこと。出会うことに慣れなくてよかったって思うんだ。
出会うことを奇跡だと思う。その奇跡に慣れてしまったら、大切な人と出会う幸せな瞬間を、感謝できないだろう。
初めての出会いは、おもちゃ箱の外にある。
少しだけ勇気を出して、そのおもちゃ箱の鍵を開けてみる。
きっとあなたに、出会えるから。
こちらの企画に参加させていただきました。
誰かと出会うこと、それはどんなときも初めてのことで、私はいつも緊張してしまいます。
だけど、小さな一歩は新たなる一歩。
おもちゃ箱の中の小さな経験をいかして、私はあなたとの出会いを大切にしたいのです。
サークル「25時のおもちゃ箱」の6月のテーマ、「おもちゃ箱」で書いてみました。
2020.6.16
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