旅立ちの朝に捧ぐ、「ありがとう」
夜が明ければ、新しい1日が始まる。
よく眠れなくて寝返りを打つと、母の寝息が聞こえてきた。
女でひとつで、私を育ててくれた母。
「あなたの人生での色節だから」
そう言って、母が少しだけ無理をしていたことは、祖父から話を聞かされていた。
明日になれば、私はこの家を出て行く。
母が買ってくれたウエディングドレスを着て。
「自分が失敗したから、あなたには幸せになってほしい」
母の言葉はいつだって、私を想ってくれてのことだった。
「ありがとう」
母の寝息に混ざるように、背中にそっとその言葉を零す。
本当はずっと側にいたかったのに、私が選んだ人は、いつどこに転勤になるかもわからない。
私たちが住む場所も大阪。近くはない。
初めて大阪に連れて行った時、実は初めて食べるのと、美味しそうにお好み焼きを食べていた母。
「今度はゆっくり、大阪案内するからね」
「楽しみにしてる」
母の言葉が、寝息に混じって届いた。
いいなと思ったら応援しよう!
いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。