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vegetarist
秘密の時間を抱きしめて
私たちが密会場所として選んでいる場所は、横浜の中華街だった。
都内から神奈川まで出かけるのは、私たちが人目を避けているから。
大勢の人々が行き交う中華街は、私たちが誰に気兼ねすることもなく、お互いの手と手を絡められる場所だった。
時には、豚まんを分け合って、二人で仲良く頬張る。
時には、元町にある隠れ家のようなお店で、オムライスを食べながらいろんな話をした。
結ばれることがない私たちの関係。
そのことに気づきながら、胸の痛みに感じないふりをして、睦ぶ二人の時間。
いつか終わりにしなければ。
そんなことはわかっている。
だけど、あともう少しだけ、この繋いだ手を離したくないと心が叫んでいる。
「このチャイナドレス、似合うかな」
少し派手にも思える水色のチャイナドレスを手に取る。
「似合うと思う」
優しく笑った彼は、それを私にプレゼントしてくれた。
あなたの隣では決して着ることのない、そのチャイナドレスを。
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