生物部とゴキブリ(あなたを笑顔にしたい)
最近、自分が精神科に通っているのは精神を病んでいるからではなく、頭が決定的に悪い為であることを自覚し始めた。
20歳を過ぎても、恥ずかしくてレジでもじもじしながらも、頭脳パンなる商品をコンビニですがるように買って食べていたほどの馬鹿である。
頭の悪い私は、
中学入学テストで英語の成績がかろうじてよかったため、進学を許された。
その中学で、入ったのが生物部とバトミントン部であった。
かけもちである。
生物部は、虫が好きだったので入部した。先輩達は無茶苦茶私を嫌がった。
ほとんど記憶がなかったのだが、小学校の頃同級生だった女の子に、大学の頃指摘された事件を思い出したので、謹んでここに記す。
彼女もかなりすごい子で、小学校時代に流行した香り付き消しゴムを「食べて」と頼むと食べる子だった。
彼女も今では原子力発電エンジニアとして子供達を女手一つで育て上げた立派な母親である。
私の話に戻る。
生物部で、学園祭の為の恒例の発表会をしようという話し合いで、どういう訳かわからないが、ゴキブリの研究が決まった。
誰かゴキブリを捕まえられないか、という肝心の話になったところで、目立ちたがり屋の私は即、挙手をして「ウチにいっぱいいます!」と叫んだ。
彼女は、同じ生物部だったので、おまけに優しいので、「森田。失笑をかってたよ。」と大学に入ってから教えてくれたのだ。
しかし、この話には続きがある。
ゴキブリは家に1匹もいなかった。
うちにはホウ酸ダンゴがあったので、ゴキブリホイホイすらなかった。
これはまずい。と私はうろたえた。
山ほどのゴキブリを、どうやって捕まえればいいのか。
パニックになった私は、なけなしのお小遣いから100円を払い、魚屋でイワシ数匹を買った。
親は塾の先生だから家にいない。
どうしよう。
パニックの私はふらふらと土手を降りて河岸に立った。
フナムシがいた。
ゴキブリに似ていた。
ここにイワシを置いておけば、フナムシと一緒にゴキブリも来るだろう的な発想がよぎったのであろう。
私は買ったイワシを川岸のコンクリートの上に置き、その場を立ち去った。
夕飯を食べて夜もふけた頃、
ちょっとワクワクしながらイワシを見に河岸に行った。
岸辺に降りた私は、イワシの姿を暗闇の中探した。
イワシはどこにも見えなかった。
あれ?
と思ってよく見ると、イワシは脚の細くて長い吸血生物(おそらくタカアシクモ)にビッシリ覆われてあたり一面その吸血生物がひしめいていた。
私はあまりの恐怖に心臓が凍りつき、
「ママーーー!!!!」
と泣き叫びながら家に猛ダッシュした。
私の虚栄心は、とんでもない現実を私に見せることとなった。
泣きながら私は、ママ、明日までにゴキブリをたくさん捕まえないといけない。と話すと、何をバカなことを言っているんだと相手にされなかった。
翌日、私は素直に、ゴキブリは捕まえられなかった、と皆の前で謝罪した。
やっぱ森田ダメじゃん的な空気だった。
後日、学園祭があったが、生物部のゴキブリの発表会は見に行かなかった。
気持ちが悪いからである。
そもそも、何故女子校の華やかな学園祭でゴキブリの発表会をしなければならないのか、今でも私にはわからない。
私の話はすべて真実である。
あなたを笑顔にさせたかった。