『お金がない』が好きだった
昔からお金がない。
子ども時代は、テレビで、てんとう虫の歌、というアニメに感動したりしていた。
学生時代はもちろんのこと、働き始めてからも、財布に一万円札が一枚入っているだけで緊張した。
それ以上持ち歩くことはほとんど無く、いつも千円札が数枚財布にあればホッとした。
織田裕二の『お金がない』というドラマを、私にしては珍しく毎週観ていた。
働いている頃も、二万円以上財布にお金があるのは、育英会の奨学金を返済する日だけだったように思う。
いまだに財布には二千円以上は入っていない。
ケチではない。
初任給が出た時は、薄給だったが、後輩の男の子たちを連れて、梅ヶ丘のお寿司屋さんで好きなだけ食べなさい、とアホみたいな先輩風をふかした。
高級寿司屋さんではなかったけど。
あんまりお金がいっぱいない時の方が幸せだった気がする。
お金では買えない、愛や友情や慈愛の方が価値がある。
いまだにお金がない。
でも、幸せだ。
何ヶ月かに一回だけど、美味しいラーメンを食べたり、安いウイスキーを薄めて飲んだり。
何より、愛する人々や娘の亀さんがいる。
お金では買えない。
父がかつて言った。
「一生懸命になった記憶は一番最後まで宝物になるよ」
と。
齢50。
一生懸命に生きたい。