黄色いひもを引っ張ってバスを降りた日。バンクーバー到着初日の思い出
ここはカナダのバンクーバー。
日本からはるばる飛行機でやってきた。
バンクーバー国際空港からダウンタウンのウォーターフロント駅までは電車で行く。
バンクーバーの電車の仕組みは日本と似ていて、スイカのようなカードにお金をチャージして、改札でタッチする。
東京のように路線が張り巡らされているわけではないので、バスを使うことも多い。となり街のバーナビーにある滞在先にはバスで行く予定だった。
R5 という謎めいた路線番号をたよりに目当てのバス停を見つけた。少し待つと、おおよそスケジュール通りにバスが来た。
……ちょっと待て、バスにはどうやって乗るんだろう。前後どちらの扉から乗車するとか、ルールはあるのか?
運賃は前払い?いくらなんだろう。というかどうやって払うんだ?
急いでネットで検索した。どうやら電車と同じくカードを読み取り機にタップすれば良いらしい。まわりの人にならってやってみる。
成功したらしい音がなった。表示された残高がマイナス何ドルになっているように見えたが、気のせいだろうか。マイナスって何だ。意味がわからない。
まあとにかくこれで一安心。後は 40 分後に降りるだけ。
……ちょっと待て、バスからはどうやって降りるんだろう。降車ボタンが見当たらない。
バンクーバーに来る前、フィリピンに滞在していたときのことを思い出した。フィリピンの格安交通機関ジプニーでは、コインを手すりに打ち付けて降りる意思を運転手に伝えていた。
しかし、さすがにカナダでそれはないだろうと意識を現実に引きもどす。
周囲を観察してみるが、いまいち分からない。たまに無人のバス停で止まっているので、何かの方法で止めているはずなのだが、それらしい動きをしている人がいない。
仕方がないので、またもネットで検索してみた。記事によると黄色いひもを引っ張るらしい。
そんな原始的なわけあるか、何年前の記事だと思った。ボタンがどこにあるのか知りたいんだ。
しかし念のため顔を上げて車内を見渡すと、たしかに黄色いひもが窓際にぶら下がっていることに気づいた。もしかしてこれのことか?間違って引っ張ったらちょっと恥ずかしい。
決心してひもに手をかけたとき、停車のアナウンスがなった。しまった、あと一歩のところで他の乗客に先を越されてしまった!こうなるとなぜか悔しい。
無事ホームステイ先に到着した。16 時間の時差のせいで、同じ日を二回繰り返したような奇妙な感覚だった。夜に日本を出発したのに、到着したのは同じ日の昼過ぎだ。
疲れてベッドに横になり、バスの乗り方も降り方も分からなかったなんて馬鹿みたいだと思った。知らないことばかりだ。
けど、それも楽しみだなと思った。ついに海外生活が始まった。