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岡山新報デジタル【古事記】

【古事記現代語訳】

◇天岩戸(あまのいわと)

そこで、ハヤスサノヲ命が、アマテラス大神に言うには、「私の心が清らかだったので、私の生んだ子は媛御子でした。これによっていえば当然私の勝ちです」と言い、勝った勢いのままアマテラス大神の耕す田の畔を壊し、その溝を埋め、また、新穀を召し上がる御殿に屎を撒き散らした。
 このようなことをしてもアマテラス大神がとがめずに言うには、「屎のようなものは酒に酔って吐き散らしのでしょう。また、田の畔を壊し溝を埋めたのは土地をもったいないと思ってそうしたのでしょう」と、良いように言い直したものの、なおその乱暴な仕業は止みません。

 アマテラス大神が神聖な機織場で神様の衣を織らしていた時、その機屋の屋根に穴を開け、天の斑馬(あめのふちむま)の皮を逆さに剥ぎ取って落とし入れたので、天の機織女(あめのはたおりめ)が見て驚き、梭(ひ)で陰部を刺して死んでしまいました。
 それでアマテラス大神もこれを恐れ、天の石屋戸を開けて中に隠れてしまいました。
そのため、高天原はまっ暗くなり葦原中国もこことごとく闇くなりました。
こうして永久に闇が続いていったのです。そして、様々な神の声が夏の蝿のように充満し、あらゆる禍いがすべて起こりました。

 このようになったので、八百万の神が天の安河の川原に集まり、タカミムスヒ神の子の思金(オモヒカネ)の神に考えさせて、まず常世の長鳴鳥を集めて鳴かせました。

次に天の安河の川上にある天の堅い岩を取って来、天の金山の鉄を採り、鍛冶師の天津麻羅(アマツマラ)を探し、伊斯許理度売(イシコリドメ)命に命じて鏡を作らせて、王の祖(タマノオヤ)命に命じて八尺の勾玉の五百箇の御統の珠を作らせ、天の児屋(アメノコヤネ)命と布刀玉(フトダマ)命を呼んで、天の香山の雄鹿の肩の骨を抜き取り、天の香山の波々迦(ははか)の木を取って骨を焼いて占いをさせました。

天の香山のよく繁っている賢木(さかき)を根ごと掘り起こして、上の枝に八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠を取り付け、中の枝に八咫鏡(やたのかがみ)を取りかけ、下の枝に白和幣(しらにきて)・青和幣(あをにきて)を垂れかけ、この種々の品は、フトダマ命が太御幣(ふとみてぐら)として奉げ持ち、アマノコヤネ命が神聖な祝詞を唱えて、天の手力男(アメノタヂカラヲ)神が脇に隠れて立ち、天の宇受売(アメノウズメ)命が天の香山の天の日影を襷(たすき)にかけ、真拆の蔓をカツラにして、天の香山の笹の葉を束ねて手に持ち、アマテラス大神がお隠れになった天の石屋戸にの前に桶を伏せて踏み鳴らし、神憑りをして、胸乳をさらけ出し、裳の紐を陰部までおし下げたので、タカアマノハラが鳴り響き、八百万の神が一斉に笑ったのです。

 そこでアマテラス大神は不思議に思い、天の石屋戸を細めに開けて内から言うには、
「私が隠れているので高天原は自然と暗く、また葦原中国も全て闇であると思うのに、どうしてアメノウズメが舞い遊び、八百万の神が皆笑っているのかしら?」とおっしゃいました。

そこでアメノウズメが言うには、「あなた様にも勝って貴い神がいらっしゃるので、喜び笑って踊っています」と答えた。
 そう答える間に、アメノコヤネ命とフトダマ命がその鏡を差し出し、アマテラス大神に見せる時、アマテラス大神はいよいよ不思議に思い、少し戸からでかかっているところを、隠れていたタヂカラヲ神が大神の手を取って外へ引きずり出しました。
すぐにフトダマ命が、注連縄(しめなわ)を大神の後ろに引き渡して、
「これより内側に入ることは出来ません」と申し上げたのです。
こうして、アマテラス大神が出てくると、高天原も葦原中国も自然と照って明るくなりました。

 そこで八百万の神は共に相談し、スサノヲ命に罪を償わせるためにたくさんの品物を科し、また髭と手足の爪とを切ってタカマノハラから追放しました。


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