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掌編というより小片と言いたい

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#エッセイ

このまま消えて、無くなるように。

このまま消えて、無くなるように。

 その日は一人になった瞬間、涙が溢れて止まらなかった。

 誰もいない、携帯もない、バスルームの中。シャワーの中に嗚咽を隠して、ぼろぼろと泣いた。脳裏に浮かんだのは、上司の顔、先輩の顔、友人の顔、さっきテレビで見た芸能人の顔、歌番組のC Mで歌っていたアイドルの顔、最近会えていない好きな俳優の顔。規則性もなく、次々と浮かんでは消えてゆく顔。誰のものともわからない、老婆の顔。

 きっと一過性のもの

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