ツラツラ小説。 夜明け。
夜が明けた。朝までこの女と共に寝た。夕べからの時の流れは長いようであっという間だった。女は微笑みながら寝ている。昨夜から思っていたがやはりこの女は可愛い。一緒に寝たことを自慢できる女だ。私はそっとこの女の頭を撫でる。髪はサラサラだ。いつまでも、いつまでも触っていたくなる。正直、昨夜のことは覚えていない。枕元には、私と、その女のものである、2つの卒業アルバムがある。昨夜は二人でずっとそれを見ていた。何を話していたかは覚えていないが、きっとあの子が可愛い、この子がかっこいいなどと、他愛もない話をしていたのだろう。机の上には、この女との思い出であろう、アルバムの他には、好きだったお酒や、お菓子や、お花もあった。女はお花が好きだということを知っていたから、たくさん用意してやった。いろんな種類の花が一堂に会するそれを見るのが好きと言っていた。一つに決められない優柔不断な女だとも思ったが、そこが彼女の好きなところでもあり、私がずっと夢中でいた彼女の姿だった。私は朝食を食べに行く。そこはまるで旅館のように広く、女が寝ていることを忘れれば、私はただ一人で朝食を食べる旅客だ。朝食は普通に美味しかった。味もするし、匂いもする。正常だ。嫌になるくらい、私は正常だ。どこか異常が出てくれた方が良かったなんて、私は思った。いつもどおりの朝食と、いつもどおりのトイレをすまし、いつも通りではない扉を開ける。外も晴れている。快晴!
あと、1時間後。彼女は見えなくなる。声はないが、姿が見える今。最後。最後、最後。さいご。さいご?さいご!さいごさいご、さいご。最後。
口にするたび、実感が波のように近づいては消え、遠ざかっては、真後ろに現れる。
顔を見た。いつも通りだ。可愛い。可愛すぎる。顔を見るたび、恋をしている。
声が聴きたい。声が、声が声声声。扉が開く。ついに女は、「物」になる。物が運ばれ、物の周りに、物を置く。それは物が女であったときに好んでいたものである。生クリームのチョコレート。アップルパイ。あとは、たくさんの花。お花でぎゅうぎゅうにしていて、少し苦しそうだなぁ、なんて少し笑った。物は変わらず笑っていた。物なのに。笑っていた。物が、運ばれる。私はついていくことにした。物が運ばれた先の待合室。2時間もしないうちに、終わった。10円玉を6枚。ジュースを買うには100円足りないから、私は100円をその場所に置いていった。物は物に納まり、家に帰った。家までの帰り道。私は、空に向かって笑った。ひたすら笑った。今、笑わなければならなかった。笑って、笑って、ひたすら笑った。最後、最後、最後。夜明け前に交わした約束は、これから、笑顔たくさんの人生にしてください、だった。だから、笑う。笑い続ける。笑う、笑う。
もうすぐ、夜明けだ。