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10分小説 山。
「そうなんですよ。ここにはね、昔からデッケェもんが出るって言われてて、小さい頃は近づくなって言われてたんですよ。でもね、大人になったからやっといまこうして案内できるようになったんですよぉ、いやぁ、、長かったです…あ、ほら、見えてきましたよ。」
と、言うとその青年は指差した。そこには小さな祠があって、小さなお地蔵さんがいた。
「うちのばあちゃんもこの山が好きでね、まあ、つい先日亡くなっちまったんだけど。。へへ」
笑えない。だが、その青年のためを思うと少しでも笑うのが正解なのだろうか。
「お、あんたぁ、わらうんだねぇ。さっきから表情変えねぇからロボットかと思ったわ、、まぁ、この話して笑ってくれたのもあんただけだ。ありがとうよ。」
笑って正解だったみたいだ。やはり、こんな山の中だと人と会うのも珍しく寂しいのだろうか。
「人とは、会わねぇなぁ、全然。。こんなとこ、誰も来んのよ。あんたがひさびさのお客さんだぁ。」
あれ、さっきから僕の心の声、聞こえてる?
ちょっと、、怖い。。
「あぁ、悪い悪い。。この山の力かなんだかしらねぇけど、わかるようになっちまうのよ。。すまねぇなぁ。。でもこうしてみると、山も、いきてんだぁって思うよ。あんた、どっから来たの?」
都会。
「都会かぁ、便利なんだろうなぁ。一度は行ってみてぇなぁ、おい。」
寂しいよ。
「なんでぇ、都会も寂しいのかい。ま、田舎も寂しいもんよ。人は寂しさが常につきまとってんだ。」
あ。
「山は生きてる。ゆっくりお休み。。もうしばらくしたら、人間の優しさなんかもわかるようになる。人は表面は冷たさでいっぱいだけど、よくみると、案外暖かいかもしれないよ。こうやって山を登ってきたみたいに、向き合って、疲れて、頑張って、それで初めて相手が見えてくるんだ。」
僕は家に帰りニュースをみる。
その山では老婆の遺体とその息子と思われる人間の遺体が見つかったそうだ。
終わり。