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10分小説 2つ前の彼女。
バスに乗っていると、2つ前の席にその女性は、いた。正直、美しいという言葉では足りないほど美しくて、俗に言う一目惚れをした。
だけど、僕はもう恋愛はこりごりだ。本気で好きになるが、想いが強すぎてよく相手を困らせる。だから今も1人、どこか遠くに向かうバスに乗っているのだ。だから、そんなものに惑わされてはいけない。いけないはずなのに。
しばらく乗っていると、こんなことありえるのだろうかということが起きた。その女性が持っていたペットボトルが床に落ち、コロコロと僕の座席の横まで来た。その女性は自分の足元ばかりを探し、後ろに気付いていない。
周りの乗客は見て見ぬ振りなのだろうか、だれも教えようとしない。その女性の隣の人は目で追っていたのにも関わらず声もかけようとしない。
チャンスが僕に舞い込んだみたいだ。僕はそれを拾って女性に近づくべく一つ前の席に座る。ずっと困っている女性。
僕は声をかけて、その女性は振り向いた。近くで見ると心臓が止まりそうになるくらい可愛かった。
あの、これ、、
それしか言えずペットボトルを差し出した。
ありがとう。
その声に聞き覚えがあった。だけど思い出せずにいると、あなたはいつも優しいね。と言って、そこで女性はバスを降りた。
気がつくと、病院にいた。目の前が黒く、白くなっていて僕は何が起きたのか聞いたが。
医師は何があったんですか?道に倒れてたんですよ?
と言った。僕は曖昧な記憶を頼りに口を開いて、
懐かしい人と会ってきた。と言った。
それしか言えなかった。あの女性は死んだ彼女。僕の前の前の彼女。
2つ前の彼女。