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日本がアフリカに置き去りにした秘密


三浦英之著
集英社発行
ルポルタージュ「太陽の子」を読みました。

著者の三浦英之さんは朝日新聞記者、ルポライターです。
書店で見つけて、何となく手に取りましたが、
内容は衝撃的でした。

「表紙」 こちらへ向けられる強い視線は何を訴える


『1970年代、コンゴでの日本企業の鉱山開発に伴い1000人以上の日本人男性が現地に赴任し、そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺したことを報道したことはありますか?』

こんな衝撃的な、記者への投稿文に端を発する長いルポルタージュです。

高度経済成長の只中、資源を求めて外国に出た企業はたくさんあり、
単身赴任が長期に渡ったビジネスマンも多くいます。

妻に隠さなければいけない事実が生まれたこともあったでしょうし、
そんな時に上手い言葉だけ残してあとは知らん顔した男もいるでしょう。
よくある話か…とも思いました。

しかし置き去りにされた子どもが、数十人から数百人(実態がつかめない)ともなると、個人の問題とは言えなくなるのでは?

今なお50人の「生き残り」が組織を作って過酷な毎日に耐えているとなれば尚更、知らなければならないことがここに書いてあるような気がしました。

投稿文にあった「嬰児殺し」は誤報であるという結果に結びつくのですが、
置き去りにされた子どもがいることは間違いないです。

置き去りにされた子どもたちへの『責任』を考えると、
悲しいことに金銭補償しか手立てを思い描けないのですが、
その子ども達の願いは、「父に会いたい」という純粋な、
人間なら誰しも持っていて当然な気持ちだけなのだと、
ルポを読んでいくとよくわかってきます。

本の厚み中ほどのところに、
取材に応じた人たちの写真が挿入されています。

まっすぐこちらを見る強い瞳や柔らかい笑顔の写真を見ていると、
この人たちが実際に存在していることを強く認識させられます。

半ばまで読み進めてくるうちに、ルポルタージュだと知って読みつつも、
何だか自分とは遠くかけ離れた世界の「物語のあらすじ」を読んでいるような感覚になっていたのですが、数枚のカラー写真にぐいっと現実的な肌感ある世界に引き戻されました。

この人たちの境遇は、今の自分の生活と同じ時間に存在しているのだと、
急なリアリティで迫ってくるようです。

「太陽の子」
他の人にも読んでほしいので、図書館に寄付することにしました

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