雑文 #279 誕生日
数日前に、ひとつ歳を取った。
今年の誕生日は、キリがいい数字でもないのになぜか焦る。これでいいのか、これでいいのか自分?とどこかで声がするような感じ。
良くはないと思う。
でもどうしたらいいのだろう。いつからか、頭がぼんやりする。靄がかかっているような気がする。私が撮った、中秋の名月の写真のように。
雲の切れ間から見える明るさ。大きくてまんまるの、輝くお月さま。
私の頭は靄がかっているから、うまい言葉が出てこない。話しているときも、書くときも。考え事も少ない。感情がはっきりしない。感動もあまりない。前はもっとピリッとしてた。やはりコロナ禍でこうなったのかな。
誕生日の日、ひとりで家で過ごした。何をするでもなく。SNSを眺めた。そこに
「正直に言うと、コロナ禍になってから好きなことが楽しめなくなった。絵を見ても本を読んでも心が動かないし、音楽は聴けなくなった」
みたいなことを書いていた人がいた。
私はたまたま目にしたその投稿に、激しく共感した。
もっと世界はきれいだった。私の目にはそう映っていた。おもしろいことがあって、わはわはと笑っていたものだ。不意に涙が出ちゃったり、無性に腹が立ったりしたものだ。かわいいとか素敵だとか、欲しいとか会いたいとか、もっともっと思ったものだった。
こんなにぼんやりと、月日だけが過ぎていっていいのだろうか。
私は最近あまり夢をみないし、みても冴えない夢しかみない。むしろ落ち込むような。
頭がぼんやりしてると夢さえみないのだろうか。
誕生日も、友人などからメッセージや贈り物をいただいたが、総じて冴えない一日だった。いつものように。
さっき、豚汁を作ったけれど、手を抜いたので味がぼんやりとしていた。なぜか?気づいたのだ。葱もしくは玉ねぎが入っていなかったことに。
葱の香味やピリッと感。玉ねぎのまろやかな甘み。そういう洒落た味わいが、私に足りてないように思えてならない。