雑文 #297 包む
私の中から何か取り出すとしたら、どんなものかと訊かれて私は岩のようなものだと答えた。
その岩は心臓くらいの大きさだがとてつもなく重く、持てない。力持ちの人ならギリギリ持てる。
例えばそれは何キロぐらいかと訊かれ、100キロぐらいあるかもと適当に答えた。
色はどんなかと言うと黒っぽいけど黒じゃない。灰色みたいな色。ゴツゴツしている。
それを私はどうしたいのか。どこに置きたいのか。
私は間髪入れず、それを柔らかい何かで包んであげたいと思う。
柔らかい、ふわりとした何かで。
包んであげたいと思ったとたん、なぜか涙が出てくる。
あなたは優しい人ですね、と言われる。
私が優しいのではなく、包んでくれる人が優しいのだ、と思うけれど、気づいたらその相手の人も泣いていた。
包んだらどうなるのか。
きっとゴツゴツが少しずつ取れていき、重さも減っていく。
最後には10キロぐらいになるかもしれない。
もしかしたらその岩自体なくなるかも…と思ったが、それは言わなかった。
すごく時間のかかることなのだ。
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