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雑文 #149
5月らしいあかるい日差しの二日間が続いた。
避難勧告地域に指定されるほどの大雨の二日間のあとに。
大雨の二日間私はひとりぼっちだった。
外に出ず、川の氾濫に怯えて心がどんどん小さくなった。
晴れて、退院する父を迎えに病院に行く。
祝福するかのような青空。
これから明るい未来が待っている?
まさか。大変なのはこれからだ。
私はこれからたくさんのものを失うのだ。
失って、悲しんで、さらに他のものを失って、心ちぎれそうになってそうやって生きていくんだ。
そんなことを思いながら、庭の手入れをした。
10年前に母と作った庭。
植木市に行って、興奮しながらたくさんの木や草花を買って、花壇を作り、配置を考え、植え、また買い足し…
大きくなったものも、淘汰されていなくなってしまったものもある。
私が絶対欲しいと主張したブルーベリーの木は、ある年から思い出したようにプリプリの実をつけ始め、夏に熟したそれを積むのが私の癒しであった。
スモークツリーは買った時の苗はほんの50センチぐらいだったのに、いまではどっしりとシンボルツリーのように背高く空に向かって伸びている。
母とふたりでひとめぼれしたばらは、他の木を押しのけてどんどん伸び今年もたくさんの花を咲かせることだろう。
小手毬は花盛りでいまいちばんきれいだ。白が眩しい。
失ったものや、これから失うもののことについて思った。
とても悲しくなりながら、庭の椅子でビールを飲み、父にわからないように外で泣いた。
涙はいくらでも出てきて止まらないから、竹ぼうきで玄関をわしわしと履いてみたけれど、なお泣けて、ここで一緒に暮らして大往生した猫のことや、大きな地震のことや、庭にさえ出られなかった日々や、四季や、亡くなった祖母や、好きになったものや人や、もう会わない人や、若さやらのことを思ってどうしようもなく胸がいっぱいになったのだった。
失うことばかりで困るな
何でこんなにつらいんだろう。