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雑文 #253 雫がぽとり
雫がぽとり、ぽとりと落ちていく。
私は呆然とただそれを見ている。
それは何の感情も起こさない。
ただぽとり、ぽとりと大事な何かが漏れていく。
鈍化している。
私は気づいたのだ。
私はもっと感情の起伏が激しかったはず。
今はただなんかイライラする。
ちょっと楽しいことがあっても、すごくうれしい気分にはなれない。
悲しいことがあってもそう。クールに呑み込んでしまう。
こういうのって、つまらないね。同時にストレスにもなる。
感情の欠落。まるで半分しか生きてないみたい。ボーっとしながら一日をこなす。
亀が首を引っ込めるみたいに、じっと感情が蠢くのを待っているしかないのだろうか。
相次いで、親友の誕生日のある五月。ひとりは故郷で暮らしてる。もうひとりは故人。
お誕生日おめでとう。
故郷にいる友人にはプレゼントを贈った。お香とチョコレート。手紙付き。
何度かものを送ってくれた音楽好き仲間にも、お香とチョコレートを送る。やはり手紙付き。
手紙を書くのは好きだ。
あんまり長くなってしまわないように気をつけながら書く。
返事はどちらともメールで返ってくる。
故人の親友のお墓まいりに行きたいな。
私より4カ月ほど早く歳を重ねるはずだった彼女の年齢は止まったまま。
彼女が亡くなった時、私の感情はショックと悲しみに溢れたものだ。
彼女に手紙は書かない。
延々とお酒を飲みながら話をしたい。
親友たちと会えたら、いっぱい話ができたら、私の心の雫は溢れ、泉となって感情が潤うことだろう。
だがいまは落ちてく雫を眺めているだけ。
聴いてくれる相手がいないのだ。
だからここにこうやって、書く。
何が言いたいのかも、よくわからないまま。