雑文 #277 知らない街へ
知らない街へ来ている。
自宅から、都合8時間かかった。なかなかの遠出である。
電車の車窓から、山が見えほんの少し色づき始めた稲穂が揺れていた。
トンボが飛んでいる。
電車はごく小さい。ゆっくりとしたスピードで田舎の線路を走る。
時の流れがゆったり。
田んぼと山と部屋から時折り聴こえる電車のコトコト音で、私は最後に秋田に住んでいた家の環境を思い出さずにはいられなかった。
今頃は涼しくなり風が優しくそよぎ、空気がしっとりと憂いを帯びて植物が次々と美しい花や実をつけつつあるのだろう。
大好きな秋。故郷へ行きたくてやるせなくなる。
けれども私は故郷とは全く反対方向の遠くの街に仕事で来ている。
思えば2年以上ぶりの遠出なので、旅好きな私は喜んでいいはずなのに、今回はあまり喜べなかった。
しかし、いつもと違う景色を見ることは、心身のリフレッシュになる。
一週間ほどここにいることになる。