雑文 #79
急にいっぱいライブ観る日々が駆け抜けて終わった。
なんだか今回のくるりは、言葉にしたらもったいないという感じ。
とにかく幸せをもらった。
ただ、結果的に幸せをもらったのだけれど、と同時に仙台公演と神奈川の一日目は苦しかった。
寂しかった。ライブ後とても疲れてしまった。
ウイスキーをちびちび飲む岸田さん、ギター、歌声、MC、そして何よりくるりの音と曲たちがいちいち愛おしくてたまらなくなったけれど、くるりが『アンテナ』を作っていた時期と、私の人生のつらいつらい暗黒期が重なっていたので、私はどうしてもこの12年を思い返さずにはいられなかった。
「飴色の部屋」ですごく寂しくなった。
「ハイウェイ」でちょっと慰められたけど、私は孤独なんだなと思った。
冷たい花がこぼれ落ち、私は私の過去と決別するべきなんだと悟った。
思い出は残るけど、私は私で歩いていかなきゃいけないと、本当にさようならなんだと思った。
そしたら「さよなら春の日」で涙が出た。
目が痛くて、胸が痛くて、でもくるりは限りなく優しくてまた泣けた。
そうして神奈川公演二日目に行き、また泣くんだろうなと思ったら、意外と泣かなかった。
「ジョゼのテーマ」のギターに度肝を抜かれ、夢うつつで、私は暗黒期に『ジョゼと虎と魚たち』を観て「なんて寂しい映画なんだろう」と心が痛みすぎ、くるりの音楽が全編に流れているのにもう二度と観られないなと思ったのだけれど、でもこの日の「ジョゼのテーマ」を聴いて「あ、もうそろそろ観れるかもしれない」と思った。
神奈川公演の時間は本当にあっという間に感じた。
気づけばもう最後の曲で、「琥珀色の街、上海蟹の朝」の、「もう君はひとりじゃない」って詞にびっくりした。
確かそう言ったはず。
ひとりぼっちで行く、と「飴色の部屋」で言いながら、もう君はひとりじゃない、と語りかける矛盾。
わかんない、こんなに心が揺さぶられて涙が出たのは、いろんな要因が重なったのだろうけど、私は次の時期に入ったんだ、と思った。
思い切れなかったこと、踏み出せなかったこと。道に迷っていたこと。
自らの「HOW TO GO」がわからなくなっていた私も、ようやく新たに始まるんだと思った。
たまたま私もそんな時期だった。
失ってしまったものを、ちゃんと失ったと認めて殻を破るのだ。
こうして私は最終的に幸せをもらったのだ。
上海蟹の殻は私は不器用だから、上手に割って破ってほしい。