雑文 #88
お祭りの練習の音が聴こえてくるようになった。
竿灯まつりである。
太鼓と笛の音である。
私にとってこの音が、いちばん「夏」を感じさせるものかもしれないと思った。西瓜とか、花火とか、太陽とか、蚊とか蚊取り線香とかトンボとか、ひまわりとか素麺とかよりも。
ものすごくピンポイントなのだ。竿灯まつりは8月3日から始まり、3日間で終わり、秋田の夏は淡く短い。
そしてものすごく地元のお祭りなのだ。小さい頃は家の裏で大人たちが竿灯の練習していたし(だからいまさら見てもぜんぜんすごいと思わない)、祭り当日は家の前の通りを竿灯が山王大通りに向けて練り歩いた。それらを見るよりも聴いた。音の記憶が深い。
てことで、まあ、夏。
私はふにゃふにゃとしている。
暑くてふにゃふにゃとしているのではない。いやけっこう暑いんだけど、なんかこう、やる気が出ないのだ。思考が起こらないのだ。頭の回転が鈍いのだ。要するにぼんやりしているのだ。
なぜだろう。
てきぱきしたい。
まあ私のてきぱきも、大したてきぱきでもないんだけれど、うん……もっと鋭くありたい。
すごく世知辛いことを言えば大人になってから私はいまいちばん経済的に苦しいかもしれない。
なぜこんな歳になってこんなにお小遣いもないのか。
まあわかってる。定職に就いていないからだ。就いているように見えて(見えてさえいないかもしれないね)、不定期に働いているからだ。あと家業と言っていいことをしているからだ。妹や弟たちに協力したいからだ。妹たちが一生懸命やっているからだ。邪魔にならず役に立ちたいからだ。
しかし、つらい。お金ないのつらい。大学生のときや、その後の若い時期にあんまりお金に苦労しなかったので、ここにきてつらい。愚痴も吐きたくなるけど誰にも吐けない。
ライブに行ったりして派手に遊んでいると思う人もいるかもしれないが、はっきり言ってライブに行くこと以外娯楽は何もしていない。音楽と読書とごくたまに映画。友人と外食や飲みにもほぼ行かない(行けない)。旅行も行かない(行けない)。でもポケモンごときで楽しめるほどコドモじゃない。
夏は他の季節より誘いが多いのだ。断る。二千円以下の娯楽ならいいけど。って世知辛すぎないか?
まあ、9月のためにお金を貯めてるっていうのは大いにあるんだけど、それにしても昔は海外旅行もしていたのに、年に一度の京都旅行に首が回らないってほんと情けない。
自分の仕事が欲しい。