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雑文 #240 春の朝、春の夜

ため息だけで呼吸している気がする。

何もしたくなくて、でも何もしない時間は持て余して、どうしたらいい?
好きなこともできなくなってしまった。

去年は、唯一、食べたり飲んだりしてストレス発散していたから、肥えたけど、まだものが美味しいぶん良かったのかもしれない。

近頃あんまり美味しくない。

朝はもともと弱いから気分は良くないが、最近はよりいっそう沈んで、心底出掛けたくない。
なぜ家から出るのがそんなにいやなのか、夜の自分にはちょっと理解し難いぐらい本当に出掛けたくない。

春なのに。
それとも春だからか。

休みの日、美容院を予約して昼前家を出る。
もちろん出掛けたくない気持ちと必死に闘うのだが、結局出掛けると、春の風。
春の匂い。
ゆらりとして、私は春に留まりたくなる。
このぼーっとする感じを、いちばん感じられる丘に立って何時間も無になって過ごしたくなる。

でもあいにく用事があるのだ。
しかも東京に、春ゆらゆらできる丘はなかなかない。

ゆりかごに揺られるように、何時間も春の生温い風に吹かれていたいと思う。
思いながらも、現実の私は都会の雑居ビルで髪の毛を切ってもらう。

お腹がすいた。
終わったら、ラーメンを食べようと思う。
ぺこぺこのお腹へのラーメンはさすがに美味しかった。

ちょっと二時間だけ飲みに行こうと思う。
飲みながら、また明日出掛けなきゃいけないことを憂うけれど、お酒と春の力でふわりと浮いた身体は、もうため息はついていない。
少しの笑顔と冗談を放ち、私は小さな満足の中にいる。
その満足は、また寝てる間に消えてしまうけど、それは仕方のないルーティーン。

暗闇の、どこからともなく沈丁花がふわりと香ってくるこの春の夜は私の味方だ。


#日記 #雑文 #散文 #春

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