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雑文 #206 リバー
川辺を歩いた。
久しぶりに、コンクリートではない砂利道を踏みしめしばし歩く。
この頃いろんな街を歩いているのは、会社のホームページをリニューアルするにあたっての撮影場所をロケハンしているから。
全部都内だが、これがちょっとした小旅行みたいになって、リフレッシュできているかもしれない。
お陰で眠れなくなってないし、ピリピリ感もない。
午後遅くのアポイントだったから、時間調整のために敢えてその知らない街を歩いてみる。
駅から目的地まで、GoogleMapという地図を片手に歩いても、地図の読めない私はいちいち迷う。
でもその迷いに出会いがある。
たとえば今日は、大きな敷地のお寺を参ることができたし、古民家を保存し開放している館にも寄って、そこに来ていた知らない市民の親子連れの方にその街の魅力を教えてもらった。
6月に緑地で蛍が見られるということだった。
古民家の古い畳敷きに、小さな赤ちゃんがはいはいを楽しんでた。
5時近く、多摩川に出てみると、案の定日が落ちてきていて、思わず土手に下りた。
少し歩くと夕方の風が気持ちいいことに気づき、誰もいない川面近い場所に腰を下ろしてみる。
伸びきった夏草。その匂い。
近くから盛んにりんりんと虫の声が聴こえ、夕暮れは迫ってくる。
なぜか私に向かってまっすぐに、強く夕日が差してくる。
さっきまでトロンボーンの練習をしている人の音色が響いていたが、いつの間にかほとんど無音になり、時折コトコトと小田急電車の音だけが聴こえる。
ゆったりとした時間が流れ、私はほとんど誰もいない河原でしばしぼんやりとする。何も考えずに。
空気は心地良く穏やかで、時折強めの涼風が吹くと、長くなった夏草が揺れて、ススキの穂がなびく。
そんなとき私は心底秋を感じる。
強めの風に乗って夏が逃げていく。
夏は走るように駆けてゆき、そして秋が落ちてくる。
9月はやはり私の味方なんだろうか。
毎年京都の鴨川で感じる秋の気配を、たまたま
仕事の寄り道ながら、今日は体感することができた。
暗くなる前に帰ろう。
行き当たりばったりに、土手から上がって何となく歩いていたら小さな駅に着いた。
ツクツクボウシが鳴いていた。
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