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雑文 #274 ある短編小説を読んで
ある小説を読んでいて、突然ズドンときた。
愛読しててもう再々々々々読ぐらいだろうに、やはり読む年代で受ける印象が違うのだ。
短編で、サラリと書かれているのに、漫画で頭に岩が落ちてくる場面みたいに、ドスンと衝撃を受けた。
どうなんだろう、私は細かいことには敏感な気がするのに、大きなことに鈍感なのかもしれない。他の女性がとっくに心得ていることに、気づいていない。小説で、言葉にされて、初めて気づく。今に限らずいつだってそうだった。気づくの遅い。ゆっくりとゆっくりと、かたつむりみたいに。
その小説名は書かない。ショックだったから。まだちゃんと受け入れられていないから。でもそのうち受け入れるようになるのだろう、という予感はある。
足掻く。しばらくまだ足掻くんだろう。でもいつまでも足掻いてもいられないんだろう。
私の思ってたこと、間違いだったのかもしれないと考える。いや、一概にはそうも言えないとも思う。でも、心当たりがなければこんなにズドンとこないだろう。
その本は、紙がうっすら日焼けしていた。
何回も引越しして、捨てずに大事に持っていて、そのくせ読み返すごとに内容を忘れて、読むたびに違う印象を持つことに自分の深部の心の変遷を意識する。
これぞ良本。
でも、参った…年を経て、気づかされたことに、いまは打ちのめされている。
これからそのことを噛み締めて、自分なりのものにしていけばいいんだろう。
それが小説のひとつの役割なんだと思う。
短い話でも、そのような影響を与えてくれるってことに、今宵は胸が打たれた。